2025年4月4日
チームビルディングの原則:役割明確化から自律型組織へ
「最高のチーム」とは何でしょうか。メンバー全員が自分の強みを活かし、互いを高め合い、一つの目標に向かって力を合わせる。そんなチームを築くことは、多くの組織の夢であり、課題でもあります。
しかし、現実のチームビルディングは容易ではありません。個性豊かなメンバーが集まれば集まるほど、その調和を図ることは難しくなります。時には意見の対立が生じ、コミュニケーションが滞り、チームの一体感が失われることもあるでしょう。
そもそも、チームビルディングとは何を意味するのでしょうか。メンバーを集めて親睦を深めれば良いのでしょうか。それとも、明確な目標設定と役割分担が必要なのでしょうか。
本コラムでは、チームビルディングに関する研究成果をもとに、この問いに答えていきます。効果的なチーム作りのために必要な要素とは何か、どのようなアプローチが成果につながるのか、そして、チームが「一つ」になるために必要な条件とは何か。これらの問いについて探っていきましょう。
役割明確化のチームビルディング介入が特に有効
チームビルディングの効果については、数多くの研究が行われています。その中で、様々なデータを統合的に分析し、客観的な指標と主観的な指標の両面から効果を検証した論文があります[1]。
これまでのチームビルディングに関する複数の研究結果を統合し、メタ分析という手法を用いて、全体としての効果やその条件について明らかにしようとした論文です。個々の研究では見えにくかった効果の全体像や、効果を左右する要因について理解が深まります。
興味深いのは、チームビルディング全体としては統計的に有意なパフォーマンス向上効果が認められなかった点です。多様な介入方法や評価指標が混在していたために、全体として効果が相殺された可能性があります。また、介入の質や実施環境の違いも結果に反映されたと考えられます。
客観的な評価においては、チームビルディングの介入がパフォーマンスをわずかに低下させる傾向が見られました。数値で表される生産性や成果が、短期的な介入だけでは大きな変化を捉えにくいからでしょう。介入によってメンバーの役割やプロセスが一時的に混乱することも、客観的な成果に影響を与えたと推測されます。
主観的な評価においては、チームビルディングがメンバー自身の評価するパフォーマンスに対して、小規模ながらも有意な向上効果をもたらすことが分かりました。チームビルディングの過程でメンバー間のコミュニケーションが活発になり、互いの役割や期待が明確になることで、自己評価や集団としての一体感が高まったためと解釈できます。
他方で、チームビルディングの中でも役割明確化に焦点を当てた介入は、パフォーマンス向上に寄与していました。メンバーが自分の責任や貢献の仕方を理解できることで、チーム内の作業効率や協力体制が整います。役割が明確になることで、各メンバーは自信を持って業務に取り組むことができ、それがチーム全体の成果向上につながるのでしょう。
しかし、目標設定、問題解決、対人関係に焦点を当てた介入では、パフォーマンスに対する明確な効果は認められませんでした。これらの要素も、チームの雰囲気や個々の認識には一定の影響を及ぼすものの、具体的な成果に直結するには複数の要因が関与しており、単独では効果が見えにくいことが分かりました。
チームの規模に関する分析も行われ、チームが大きくなるほどチームビルディングの効果が減少する傾向が見られました。大規模なチームではメンバー間のコミュニケーションや調整がより複雑になり、介入の効果を均一に浸透させることが難しくなるのかもしれません。大人数になるほど、個々のメンバーの主体的な参加意識が薄れやすく、それが効果の低下につながる可能性も指摘されています。
チームビルディング介入の効果に関するさらなる分析
その後の研究では、より大規模なデータベースを用いて、チームビルディングの効果についてさらに詳しい分析が行われました。多数のチームを対象に、認知的、感情的、プロセス的、パフォーマンス的なアウトカムを多角的に分析した論文を紹介しましょう[2]。
論文では、チームビルディングの4つの要素である目標設定、対人関係、問題解決、役割明確化が、異なる側面にどのような影響を与えるのかが検証されました。分析の対象となったのは、複数の研究から得られたデータで、数百のチームに関するデータが統合されています。
研究の結果、今度は全体として、チームビルディングは中程度の効果を持つことが確認されました。特に顕著だったのは、感情的およびプロセス的なアウトカムにおける高い効果です。チームビルディングがチーム内の信頼関係や協力体制、コミュニケーションの改善に貢献することを示しています。
ただし、認知的な側面における効果はやや低めでした。チームビルディングが知識の共有や専門性の向上よりも、対人関係や調整プロセスの改善に強く作用することを示唆しています。実際の業務に必要な専門知識やスキルの向上には、別の取り組みが必要かもしれません。
チームビルディングの要素別に見ると、目標設定が最も高い効果を示しました。明確な目標を共有することで、チーム内の方向性が定まり、役割や期待が明確になるためと考えられます。目標設定を通じて、各メンバーが自分の役割と責任を理解し、それに向かって努力する姿勢が生まれやすくなるのです。
介入期間による違いも分析され、長期間の介入の方が効果は高いことが分かりました。メンバー間の信頼関係やプロセスの改善が時間をかけて定着し、より高い効果が得られるからでしょう。短期的な介入では一時的な改善は見られても、それを持続的な成果につなげるのは難しい可能性があります。
この論文の意義は、チームビルディングの効果を多面的に捉え、どのような条件で、どのような効果が期待できるのかを明らかにした点にあります。特に、感情的・プロセス的な側面での効果が高いという発見は、チームビルディングが組織の基盤を強化する上で重要な役割を果たすことを表しています。
チームビルディングの可能性と課題とは
チームビルディングの手法とその効果について、詳細な研究が行われました。研究では、チームビルディングを通じた創造性と革新性の促進、オープンなコミュニケーションの確立、そして協働作業の効率化に焦点が当てられています[3]。
明らかになったのは、多様な背景やスキルを持つメンバーが集まることで、新たなアイデアが生まれやすくなる点です。異なる視点が交わることで、従来の枠にとらわれない発想が刺激され、革新的な解決策が導かれます。チームの多様性がイノベーションを促進する要素となることを示しています。
意思決定の質についても、チームビルディングによる向上が確認されました。複数の意見が集約され、意思決定のプロセスが改善される背景には、各メンバーが持つ知識や経験が統合されることで、単一の視点に偏らない総合的な判断が可能になることがあります。
学習と成長の促進も、チームビルディングの効果として注目されています。メンバー同士の相互学習により、各自のスキルや知識が向上します。チーム内でのフィードバックや議論を通じて、個々の強みや弱点が共有され、継続的な能力開発が促進されます。この過程で、メンバー間の信頼関係も深まり、効果的な協働が可能になります。
一方で、チームビルディングには課題も存在します。十分な信頼関係が築かれない場合、協力や情報共有が阻害されます。チームビルディングの基盤はメンバー間の信頼にあり、信頼が欠如すると意見交換が活発にならず、コミュニケーションが停滞してしまいます。この問題は、特にチームが形成された初期段階で顕著に現れます。
誤解や情報の伝達ミスが発生し、チーム全体のパフォーマンスが低下するケースも見られます。役割分担や目標共有が不十分な場合、各メンバーの考えや行動がバラバラになり、意思疎通が困難になります。これを防ぐためには、早い段階からコミュニケーション・ルールを確立し、情報共有の仕組みを整備することです。
個々の目標や優先事項が異なることで、チームとしての統一した行動が取れなくなることも課題として挙げられます。チームビルディングのプロセスで目標が共有されなければ、各自が異なる方向を目指すことになり、協働作業が難しくなります。チーム全体の目標を設定し、それを全メンバーで共有する機会を設けることが必要です。
リーダーシップがチームビルディングを介して成果に
チームビルディングと成果の関係において、変革型リーダーシップが果たす役割に関する研究も行われています。具体的には、変革型リーダーシップがどのようにチームビルディングを促進し、それが最終的な成果にどうつながるのかが分析されました[4]。
研究では、まず変革型リーダーシップがプロジェクトの成功に対して直接的な影響を持つことが確認されました。リーダーがビジョンを示し、メンバーに高いモチベーションを与えることで、プロジェクトが計画通りに進み、成果が上がるということです。
変革型リーダーシップはまた、チームビルディングに対しても正の影響を持つことが分かりました。リーダーが積極的に意見交換や役割の明確化を促すことで、チーム内の信頼関係やコミュニケーションが向上し、チームビルディングが強化されます。
チームビルディング自体もプロジェクトの成功に対してポジティブな影響を持つことが確認されました。チームメンバーが共通の目標や役割を共有し、円滑なコミュニケーションと効果的な問題解決が行われることで、プロジェクトの遂行が効率的になります。
そして、変革型リーダーシップがプロジェクト成功に与える影響は、チームビルディングを介して部分的に媒介されるということも見えてきました。つまり、リーダーの行動が直接的な影響を持つだけでなく、チームビルディングを通じた間接的な効果も生み出しているのです。
この媒介効果は、変革型リーダーシップによってチームビルディングが促進され、その結果としてチーム内の協働やコミュニケーションが向上し、それがプロジェクト全体の成功につながるというプロセスを示しています。リーダーの行動が、直接的な影響と、チームの機能を通じた間接的な影響の両方を通じて、組織の成果に貢献しています。
リーダーシップはチームビルディングに影響を与える
チームビルディングにおいて、リーダーシップのあり方は重要です。ある研究では、リーダーシップがチームビルディングに及ぼす影響について分析が行われました。この研究は、複数の組織環境からデータを収集し、様々なリーダーシップスタイルとチームビルディングの関係を検証しています[5]。
調査では、目標の明確性、変革型リーダーシップ、チームコラボレーション、チームの結束力などの要素が検討されました。その結果、リーダーはチーム目標を比較的明確に伝えているものの、回答者間の意見にはばらつきが見られることが分かりました。同じメッセージでも、受け手によって解釈が異なる可能性があることを示唆しています。
変革型リーダーシップについては、チームビルディングに好影響を与えると評価される一方で、その影響の受け止め方には個人差があることが明らかになりました。リーダーの変革的な行動が、メンバーの個性や価値観によって異なる形で受け止められるのです。
チームコラボレーションについては、高い評価が得られました。チーム内の協力や共同作業に関して、リーダーシップの影響が強く反映されています。適切なリーダーシップの下では、メンバー間の協力関係が自然と構築されていくのでしょう。
一方、専制的リーダーシップについては、低い評価となりました。専制型のリーダーシップは否定的に評価されており、厳しすぎる指導方法がメンバーの自主性や協働意識を低下させる可能性があります。現代の組織において、一方的な指示や命令が効果的でない可能性を示唆しています。
参加型リーダーシップは、比較的高い評価を得ました。メンバーが意思決定に参加することがチームの連携やモチベーション向上に寄与しています。参加型のアプローチは、メンバーの主体性を引き出し、チーム全体の機能向上につながると考えられます。
研究では、リーダーシップスタイルのわずかな変化が、チームビルディングに大きな影響を与えることも明らかになりました。リーダーの行動や姿勢が、チーム全体の協働性に劇的な変化をもたらす可能性があることを意味しています。
チームがコミュニティになっていく
チームビルディングの発展形として、チームがコミュニティへと進化していく過程に注目した研究も行われています。研究では、従来のピラミッド型の管理体制から自己管理型チームへの移行、そしてさらにその先にある「職場コミュニティ」の構築について検討されました[6]。
研究で興味深いのは、自己管理型チームを導入した直後は、一時的に生産性が低下する点です。従来の明確な指示系統や業務手順に慣れていたメンバーが、新たに自律的な意思決定や柔軟な対応を求められるからです。この適応期間は避けられないものの、それを経ることで組織は強固な基盤を築いていくことができます。
しかし、時間をかけて各メンバーが新たな役割やスキルを習得し、自分で問題を解決する体制が整うと、結果的に業務効率が向上し、無駄なコストが削減されるようになります。初めは新しい方法への適応に時間がかかりますが、個々のメンバーが自らのスキルを磨き、意思決定を行う能力が向上することで、最終的には各自が責任を持って業務に取り組むようになるのです。
コミュニティ化が進むと、従来の上からの指示に頼るのではなく、各メンバーが自身の意見やアイデアを持ち寄り、互いにリーダーシップを発揮できるような職場環境が構築されます。垂直的なヒエラルキーが解消され、様々な意見が尊重されるため、誰もが組織の一員として関与できる状態が実現します。
この過程で重要なのは、チーム内での意思決定プロセスの変化です。フォーラムなどの公開の場を利用した全員参加型の議論が行われるようになり、各メンバーが意見交換に参加することで、多様な視点が取り入れられ、意思決定の過程がオープンになります。意見の衝突が発生した場合でも、事前に多様な意見を反映させることで合意形成が容易になります。
コミュニティ型組織では、情報共有やオープンな対話を通じて、従来型の組織の壁を克服し、各メンバーが創造性を発揮しやすくなります。この環境では、メンバーは単なる指示の実行者ではなく、組織の価値を共に創造する主体として活動することができます。
組織内の相互信頼やプロセスの改善が時間をかけて定着することで、より高い効果が得られることも分かっています。コミュニティ型組織への移行は、一朝一夕には実現できませんが、段階的な変革を通じて、各メンバーが自らの役割と責任を認識し、相互に支え合う場が形成されていきます。
脚注
[1] Salas, E., Rozell, D., Mullen, B., and Driskell, J. E. (1999). The effect of team building on performance: An integration. Small Group Research, 30(3), 309-329.
[2] Klein, C., DiazGranados, D., Salas, E., Le, H., Burke, C. S., Lyons, R., and Goodwin, G. F. (2009). Does team building work? Small Group Research, 40(2), 181-222.
[3] Obiekwe, O., Obiekwe, P. A., and Obiekwe, P. A. (2023). Team building in organizations: Benefit and challenge – A review. International Journal of Social Sciences and Management Research, 9(3), 42-52.
[4] Aga, D. A., Noorderhaven, N., and Vallejo, B. (2016). Transformational leadership and project success: The mediating role of team-building. International Journal of Project Management, 34(5), 806-818.
[5] Munir, Y. (2013). Empirical investigation of leadership style on enhancing team building skills. International Journal of Leadership Studies, 8(2), 45-62.
[6] Nirenberg, J. (2007). From team building to community building. National Productivity Review, 14(1), 15-21.
執筆者
伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。