2025年4月3日
なぜ今、チームビルディングなのか:実証研究が明かす効果
ビジネスの現場において、チームで働くことは当たり前となっています。一人ひとりの力を結集し、組織として大きな成果を生み出すために、チームビルディングは欠かせません。しかし、実際にチームビルディングは組織にどのような価値をもたらすのでしょうか。
世界中の研究者たちが、チームビルディングの効果について実証的な研究を行ってきました。これらの研究から、チームビルディングが企業の生産性を高め、メンバーの能力開発を促進し、チーム内のコミュニケーションを活性化させることが明らかになっています。さらに、チーム内での問題解決力を向上させ、公平感と組み合わさることで、チームの持続可能性を高めることも分かってきました。
本コラムでは、これまでの実証研究をもとに、チームビルディングがもたらす多面的な意義について考察していきます。
生産性向上への貢献
実証研究によると、チームビルディングは組織の生産性向上に貢献することが分かっています。ナイジェリアのオシュン州の水道公社で行われた調査では、チーム内の信頼関係や相互尊重が、生産性に変化をもたらすことが判明しました[1]。
調査では、チーム内の対人関係や相互支援の体制に注目して分析が行われました。水道公社のスタッフを対象に、日常の業務プロセスを通じて、メンバー間の協力や支援、相互尊重がどのように生産性に関わるかが評価されました。
分析の結果、チームビルディングを実施したグループは、実施していないグループと比べて、生産性の向上が見られました。この結果は、統計的にも有意な差として確認されており、チームビルディングと生産性の間には関連性があることが示されています。
こうした結果が得られた背景には、いくつかの要因があります。第一に、チームビルディングを通じて、メンバー間の情報共有や問題解決が迅速化されたことが挙げられます。教育背景や個人の能力の違いを超えて、共通の目標に向かって連携することで、組織全体としての生産性が向上したのです。
第二に、チームビルディングによって、継続的な学習や再訓練の機会が生まれたことも重要です。研究では、従業員の技能や意識が向上し、業務効率の改善、士気の向上、さらには廃棄物削減にも効果があったことが確認されています。トレーニングによって最新の知識や技術が身につき、業務プロセスが合理化されるとともに、従業員が自己成長を実感することでモチベーションが上がった結果だと考えられます。
第三に、チームリーダーの存在が生産性向上に寄与していることも分かりました。リーダーが持つ技術的知識や、メンバーと円滑にコミュニケーションを取る能力が、生産性向上に影響を与えています。有能なリーダーは、チーム内での指導や調整、問題解決において中心的な存在となり、業務の効率が上がって、従業員のパフォーマンスが最大化される結果となりました。
これらの要素は単独で機能するのではなく、相互に補完し合うことで、より大きな生産性向上を実現します。信頼や協力の文化が確立されることで、各メンバーが個々の能力を発揮でき、リーダーがその調整・支援を行うことで全体としてのパフォーマンスが向上するという好循環が生まれます。
能力開発のプラットフォーム
チームビルディングは、従業員の能力開発にも意義があります。インドのセメント製造会社を対象とした研究では、チームビルディングを通じた能力開発が、個人の専門性向上につながることが実証されています[2]。
具体的には、チームビルディングと従業員エンパワーメントという2つの人材開発施策が、従業員の能力に好ましい変化をもたらすことが確認されました。調査では、技術的専門知識、適応力、革新性、チームワークといった多面的な能力が評価されました。
チームビルディングを通じて、従業員間の協力が促進され、役割が明確化されることで、問題解決や目標達成に向けた一体感が生まれました。このプロセスが、従業員の業務遂行能力や創造性の向上に効果をもたらしています。
権限委譲や意思決定への参加機会の増加も、能力開発に意味を持っています。従業員が自らの役割に自信を持ち、積極的に業務に取り組む姿勢が強化されることで、業務遂行能力や創造性が高まることが確認されました。
組織学習文化という環境要因が、これらの効果を増幅させることも明らかになっています。組織全体で継続的な学びの文化が根付いていると、チームビルディングで形成された協力体制や情報共有が深く定着し、従業員個々の能力発揮を促進する環境が整います。
組織学習文化が整備されている環境では、従業員は自らの学びや成長を追求する傾向にあります。権限委譲によって得た自主性がさらに能力発揮へと結びつき、学習文化が従業員の内発的動機を刺激し、エンパワーメントのプラス効果を補強しました。
この結果は、製造業などの現場において、チームビルディングや従業員エンパワーメントを推進するだけでなく、組織全体での継続的な学びの環境を整えることが、従業員の能力向上と組織目標達成に直結することを示唆しています。
コミュニケーションの活性化
チームビルディングの意義として、組織内のコミュニケーションを活性化させる点が挙げられます。実証研究では、自己開示を中心としたチームビルディングが、コミュニケーションの頻度を高めることが確認されています[3]。
研究では、プロジェクトチーム内のメンバーを対象として、個人的なコミュニケーションと業務関連のコミュニケーションの両面から調査が行われました。3か月間にわたり、自己開示を促すチームビルディングのエクササイズが実施され、介入前後でのコミュニケーションパターンの変化が分析されました。
チームビルディング介入後、個人間のコミュニケーション頻度は統計的に有意な増加を示しました。これまで連絡や情報共有が希薄だった部分において、新たな関係性が構築されました。全体のネットワーク密度、すなわちメンバー間のつながりの濃さが向上したことが確認されました。
こうした変化が生まれた理由として、自己開示を通じて個々のメンバーが自分の個人的な情報や考えを共有することで、互いの壁が低くなり、対話のハードルが下がったことが考えられます。話し合いのきっかけが増え、結果としてコミュニケーションの頻度が上がったということです。
業務関連のコミュニケーションにおいても、同様の効果が確認されています。自己開示による個人的な信頼関係の向上が、業務連携の促進につながり、より頻繁な情報共有を可能にしました。チーム内での関係性が強化されたことで、業務上のコミュニケーションも活性化したのです。
ただし、コミュニケーションの「快適さ」という点では、異なる結果も得られています。個人的な信頼関係が一部で構築されたものの、チーム全体としての心理的安全性や快適さの向上には時間がかかることも分かりました。個別の関係が深まっても、チーム全体としての心理的安全性が広く共有されるには、より長期的な取り組みが必要であることを示唆しています。
メンタルモデルの共有促進
チームビルディングは、チームメンバー間での共通認識(メンタルモデル)の形成にも寄与します。マレーシアのプロジェクトマネージャーを対象とした研究では、チームビルディングがチーム共有メンタルモデルの形成を促進することが明らかになっています[4]。
チーム共有メンタルモデルとは、チームメンバー間で共有されるタスクの理解や、役割・責任に関する知識のことです。研究では、プロジェクトマネージャー自身のリーダーシップの役割、チームビルディングと参加の実施状況、そしてその結果としてのチーム共有メンタルモデルの形成状況が測定されました。
研究結果はリーダーシップの役割だけではチーム共有メンタルモデルが形成されにくいことを示しています。リーダーが多様な役割を同時に展開する場合、場合によってはメンバーに混乱を与え、直接的なチーム共有メンタルモデルの形成が難しくなる可能性があります。
一方で、チームビルディングと参加は、チーム共有メンタルモデルに対して強い正の関係を持つことが示されました。チームビルディング活動やメンバーの積極的な参加は、定期的なミーティング、共同作業、オープンなコミュニケーションの促進などを通じて、メンバー間での情報共有を促進します。その結果、各メンバーがタスクの進捗状況や問題点、戦略などについて同じ情報を持つことになり、チーム共有メンタルモデルの基盤が形成されるわけです。
チーム内での交流が、メンバー間の相互理解を深めることも確認されました。意見の交換やフィードバックのやり取りを通して、各メンバーが他者の視点や能力を理解し、共通の認識が形成されやすくなります。
チームビルディングの過程で、チームとしての目標や価値観、役割分担が明確になると、メンバー全員がその方向性に向かって協働するようになります。これが結果的に、チーム共有メンタルモデルの強化、要するにチーム全体での共通認識の一層の深化をもたらします。
定期的な共同作業やチーム内の活動は、メンバー間の信頼感や連携を高め、協働プロセスが円滑に進む環境を作り出します。その結果、チーム全体としての判断や対応が統一され、チーム共有メンタルモデルが形成されるメカニズムが働くことが明らかになりました。
問題解決力の強化
実証研究によると、チームビルディングは組織の問題解決力を高めます。研究開発組織の科学者を対象とした調査では、チームビルディングが問題解決に焦点を当てたアプローチとして機能することが確認されています[5]。
研究では、チームビルディングとアプリシエイティブ・インクワイアリー(AI:Appreciative Inquiry)という2種類のトレーニング介入が実施されました。チームビルディングは問題解決に焦点を当てたプログラムで、構造化された行動計画を参加者に提示し、チーム内での役割の明確化、協力体制の構築、即時的な行動の修正を狙いとしています。
一方、アプリシエイティブ・インクワイアリーは対話と共有を重視した手法で、参加者が自身の過去の成功体験や強みを分かち合いながら、未来の理想像を描くことを通して、ポジティブなチーム環境を醸成するアプローチです。これらの介入後、グループコミュニケーション、意思決定、グループ満足度、パフォーマンスといった側面が評価されました。
研究の結果、チームビルディング介入は意思決定において高い効果を示すことが分かりました。明確な行動計画を通じて意思決定の迅速化が実現し、問題解決のスピードが向上したということです。これは、ここにおけるチームビルディング介入が問題を特定し解決策を具体的に構築することに主眼を置いているためです。
他方で、チームビルディング介入は短期的な成果と行動修正には効果を発揮するものの、グループ全体の満足度や長期的な影響には限界が見られることも分かりました。問題解決に特化した構造化されたアプローチが、感情面での充実感や心理的安全性の醸成には十分でない可能性を示唆しています。
対照的に、アプリシエイティブ・インクワイアリー介入は、グループコミュニケーション、意思決定、グループ満足度のすべてにおいて良好な結果を示しました。過去の成功体験や未来のビジョンを共有することで、ポジティブな対話と協力関係が促進され、グループ内のコミュニケーションや満足度を向上させるのです。
アプリシエイティブ・インクワイアリー介入では、参加者が互いの強みや成功体験を共有することで、信頼関係が強化され、対話が活発になりました。これによって、問題解決に向けた議論が生まれやすくなり、チーム全体としての問題解決能力が向上したと考えられます。
両手法の組み合わせも検討に値します。チームビルディング介入による短期的な問題解決力の向上と、アプリシエイティブ・インクワイアリー介入によるポジティブな対話の促進は、互いに補完し合う可能性があります。即時的な課題解決と長期的なチーム文化の向上という両面から、組織の問題解決能力を強化できるのです。
研究ではチーム内での学習プロセスについても評価が行われました。アプリシエイティブ・インクワイアリー介入は全体的な学習体験において高い評価を得ており、参加者が成功体験や前向きな未来像を共有することで、ポジティブなフィードバックが得られ、学習意欲や体験全体の質が向上することも確認されています。
この結果は、問題解決力の向上には、具体的な手法の習得だけでなく、チーム内での学びや成長を支える環境づくりも重要であることを示唆しています。チームビルディングを通じて、メンバー間の信頼関係と学習文化を醸成することが、持続的な問題解決力の向上につながります。
分配的公正による効果の増幅
チームビルディングの効果は、組織内での分配的公正(評価や報酬の公平性)によって、さらに高められることが分かっています。実証研究では、チームビルディングと分配的公正が組み合わさることで、チームの持続可能性とパフォーマンスが向上することが示されています[6]。
具体的には、チームビルディングの4つの主要な要素(対人関係の向上、問題解決能力の向上、役割の明確化、目標設定の適切さ)が、分配的公正という媒介変数を通じて、チームの成果にどのような影響を与えるかが分析されました。
調査の結果、分配的公正は、チームビルディングとパフォーマンスの関係を媒介することが判明しました。特に、対人関係・問題解決と役割明確化・目標設定の各組み合わせにおいて、分配的公正が媒介効果を持つことが確認されています。
この効果が生まれる理由として、チームメンバーが公平な評価を受けることで、自身の貢献が正当に認められていると感じ、モチベーションが向上することが挙げられます。これが、チームビルディングによって形成された対人関係の強化や問題解決への取り組みをさらに促進し、結果的にチーム全体のパフォーマンスを高めることにつながります。
分配的公正は、個々のメンバーの心理的安全性にも寄与します。公平な評価制度があることで、メンバーは自分の努力が正当に認められると感じ、安心して自分の能力を発揮できるようになります。チームビルディングを通じて形成された協力体制や信頼関係がより一層強化され、チーム全体としての機能性が向上します。
分配的公正は、チームの持続可能性にも影響を与えることが分かりました。公平な評価と報酬の分配は、メンバーのチームに対する帰属意識や愛着を高め、長期的な視点でのチームの発展に寄与します。チームビルディングによって築かれた関係性や体制が、持続的に機能し続けるための基盤となります。
対人関係や問題解決、役割明確化と目標設定といった要素が相互に作用し合うことで、個々の効果を超えた強化作用も見られました。役割の明確化と目標設定がパフォーマンスに与える影響は大きく、分配的公正との組み合わせによってその効果がさらに増幅されることが確認されています。
脚注
[1] Ulabor, E. A., Akande, S. O., and Abiodun, O. B. (2020). Investigating impacts of team-building and organisational leadership on corporate productivity: Case study of selected employees in Osun State Nigeria. Business, Management and Economics Research, 6(2), 21-29.
[2] Bhatti, S. H., Hussain, N., and Islam, Z. U. (2019). Team building, employee empowerment and employee competencies: Moderating role of organizational learning culture. European Journal of Training and Development, 43(1/2), 39-60.
[3] Pollack, J., and Matous, P. (2019). Testing the impact of targeted team building on project team communication using social network analysis. International Journal of Project Management, 37(3), 473-484.
[4] Fung, H. P. (2018). The influence of leadership roles and team building & participation on team shared mental models: A study of project managers in Malaysia. Revista de Administracao de Roraima-UFRR, Boa Vista, 8(2), 230-259.
[5] Mandal, M. (2022). Team building and appreciative inquiry in research and development teams. Vision The Journal of Business Perspective, 26(1), 87-102.
[6] Demir, A., and Ergun, E. (2023). Justice fosters the effect of team-building interventions on viability and performance. Sustainability, 15(15), 12023.
執筆者
伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。