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コラム

自分の常識は、本当に常識か:組織の意思決定を歪めるフォールス・コンセンサス(セミナーレポート)

コラム

ビジネスリサーチラボは、20251月にセミナー「自分の常識は、本当に常識か:組織の意思決定を歪めるフォールス・コンセンサス」を開催しました。

「みんなそう思っているはず」という思い込みが、時として組織の意思決定を歪めることをご存知でしょうか。

自分の考えや価値観が他者にも共有されていると過度に見積もってしまう傾向「フォールス・コンセンサス」は、ビジネスの現場においても影響を及ぼします。マネジャーの判断から会議での合意形成、さらには組織全体の方針決定に至るまで、この無意識の思い込みは様々な場面で作用します。

本セミナーでは、研究知見に基づき、フォールス・コンセンサスの発生メカニズムから、それが組織にもたらす影響、そして対処法まで解説しました。

※本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

はじめに

組織における判断の誤りは、時として取り返しのつかない結果を招きます。その中でも厄介なのが、私たち一人一人の心の中で静かに、しかし確実に形成される「思い込み」です。

とりわけ危険なのは、「自分の考えは正しく、周りも同じように考えているはずだ」という思い込みです。新製品の開発、組織改革、働き方の見直し。重要な意思決定の場面で、この思い込みが判断を歪め、組織に損失をもたらすことがあります。

しかし、この思い込みは避けられない運命なのでしょうか。心理学の分野では、この現象を「フォールス・コンセンサス」と呼び、その仕組みや対処法について、数々の研究が重ねられてきました。その知見は、現代の組織運営に新たな視座を提供しています。

本講演では、この「フォールス・コンセンサス」について研究知見をもとに、その内実と対策を探ります。皆さんの組織をより強く、しなやかなものにするための道標として、この知見をお役立てください。

フォールス・コンセンサスの基本理解

フォールス・コンセンサスとは、自分の意見や行動が他者にも広く共有されていると過度に見積もってしまう心理的な傾向のことを指します。この効果は、私たちの判断に無意識のうちに影響を与え、時として重要な気づきや発見の機会を逃す原因となります。

組織における意思決定においては良からぬ影響をもたらす可能性があります。例えば、プロジェクトリーダーが「この方針で進めることが最善だ」と確信し、チームメンバー全員が同じように感じているはずだと思い込んでしまうかもしれません。マネジャーが持つ「仕事への取り組み方」に関する価値観を、部下全員が共有しているはずだと考えてしまうケースも少なくありません。

実際には、組織の中の一人一人が、それぞれ異なる価値観や判断基準を持っています。新しい取り組みに対する期待と不安、業務の優先順位の考え方、理想的な働き方のイメージ。これらは立場や経験によって異なる可能性があります。それにもかかわらず、私たちは無意識のうちに自分の価値観を一般化し、他者に投影してしまうのです。

このような認識のギャップは、組織の様々な局面で問題を引き起こします。プロジェクトの遅延、品質の低下、チーム内の対立、モチベーションの低下など、その影響は広範に及びます。深刻なのは、このギャップに気づかないまま意思決定が進められ、問題が表面化した時には既に手遅れになっているケースです。

フォールス・コンセンサスは、組織の変革期においても障壁となります。新しい取り組みや方針の導入時に、「この方向性は正しく、皆も理解しているはずだ」という思い込みが、実際の意見の相違や懸念を見えにくくしてしまうのです。これは、変革の実効性を大きく損なう要因となりかねません。

フォールス・コンセンサスの理解を掘り下げる

フォールス・コンセンサスの問題は、表面的なコミュニケーションの齟齬にとどまりません。それは組織の創造性や革新性を脅かす可能性を持っています。なぜなら、この効果は「異なる視点」や「新しい発想」を無意識のうちに排除してしまう作用を持つからです。

組織の中で「当たり前」とされている考え方や方法が、実は特定の価値観や経験に基づく偏りを持っている可能性があります。しかし、フォールス・コンセンサスによって、その偏りに気づく機会が失われ、結果的に組織全体が硬直化していくかもしれません。市場環境が急速に変化する現代において、この硬直化は組織の存続にも関わる問題となり得ます。

フォールス・コンセンサスは、組織内の多様性を実質的に阻害する要因ともなります。形式的には多様な人材を受け入れていても、実際には特定の価値観や行動様式が「正しい」とされ、異なる発想やアプローチが評価されない状況を生み出すことがあります。組織が本来持っているはずの多様性のメリットを十分に活かせない結果につながります。

フォールス・コンセンサスが発生する背景には、4つの心理的メカニズムが存在します[1]。第一に、選択的な情報接触があります。私たちは自然と、自分と似た価値観や行動様式を持つ人々と交流する機会が多くなります。この傾向は、組織において強く現れます。同じ部署や職種の人々との日常的な交流を通じて、特定の価値観や考え方が「一般的」だという認識が強化されていきます。

第二に、顕著性と注意の焦点があります。自分の価値観や判断基準が意識の中で際立つと、それが一般的であると考えやすくなります。この効果は、自分の専門分野や得意分野において顕著に現れます。長年の経験や実績によって培われた確信が、かえって視野を狭める要因となることがあります。

第三に、論理的な情報処理の方式があります。ある行動や判断が環境や状況から必然的に導かれると考える場合、他者も同じように判断するはずだと予測しやすくなります。しかし、実際には同じ状況でも、個人の価値観や経験によって異なる解釈や対応が生まれる可能性があります。

そして第四に、動機づけの要因があります。人には、自分の判断や行動が他者に共有されていると信じることで、その正当性を確認し、心理的な安定を得ようとする傾向があります。この傾向は、重要な意思決定や困難な状況に直面した際に強まります。

これらのメカニズムは、単独で、あるいは複合的に作用することで、フォールス・コンセンサスを形成し、強化していきます。組織においては、これらのメカニズムが階層構造や権力関係と結びつくことで、その影響がより顕著になります。例えば、マネジャーや影響力のある立場にある人物の持つフォールス・コンセンサスは、組織全体の判断や行動に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、これらのメカニズムは組織の文化や慣習とも関連するでしょう。長年にわたって形成された組織文化は、特定の価値観や行動様式を「正しい」ものとして強化する傾向があります。この文化的な要因と個人の心理的メカニズムが相互に作用することで、フォールス・コンセンサスはより強固なものとなっていきます。

フォールス・コンセンサスが強くなる場合

フォールス・コンセンサスの強さは、状況や条件によって変化することが分かっています。初めに注目すべきは、同じ属性を持つ他者に対してより強く現れるという特徴です。この傾向は、性格診断に関する実験で示されています。

参加者が性格特性に関する質問に回答する際、同じ年代や性別の他者が自分と同様の性格特性を持っているだろうと予測する傾向が強く見られました[2]。これは参加者が自分と似た属性を持つ人々との関係性を重視し、その共通点から価値観も共有されているはずだと考えやすいためです。

組織の中でも、同じ部署、同じ職種、同じ年次の社員間では、フォールス・コンセンサスが強く働く可能性があります。この傾向は、一見すると自然なものに思えますが、実際には危険をはらんでいます。表面的な属性の類似性が、価値観や考え方の多様性を覆い隠してしまう可能性があるからです。

さらに、この効果は組織の階層構造とも関連し得ます。同じマネジャー層、同じ現場層の中でそれぞれフォールス・コンセンサスが形成され、結果として層間のコミュニケーション・ギャップが拡大する可能性があります。組織全体としての一体感や方向性の共有を困難にする要因となります。

加えて、質問や判断の対象が曖昧であるほど、フォールス・コンセンサスは強くなることも明らかになっています[3]。この点は、評価者による質問の曖昧さの判定と、参加者による他者の選択予測を組み合わせた実験で検証されています。

音楽の好みなど解釈の幅が広い質問では、参加者は自分の解釈を基準に他者の選択を予測する傾向が強まりました。これは各人が自身の解釈を自然なものと捉え、その解釈が普遍的だと考えてしまうためです。

この知見は、組織運営において重要な意味を持ちます。組織における多くの重要な概念や目標は、一定の曖昧さを含んでいるからです。

例えば、「顧客満足」「業務効率」「イノベーション」といった概念は、それぞれの立場や経験によって異なる解釈が可能です。しかし、これらの概念が曖昧なまま議論されると、各自が自分の主張を「一般的」だと思い込み、実質的な対話が困難になってしまいます。

この問題は、組織の方針や戦略の策定において顕著です。抽象的な目標や理念が掲げられた際、それぞれの立場で異なる解釈が生まれる可能性があります。しかし、フォールス・コンセンサスによって、その解釈の違いが表面化せず、結果的に実行段階で様々な齟齬が生じるという事態が想像できます。

他方で興味深いことに、ソーシャルメディアの影響は、一般に考えられているほど大きくないことが分かっています[4]。この発見は、性格特性や政治的態度、社会的動機に関するフォールス・コンセンサスを測定した研究から導かれています。

参加者のソーシャルメディア使用状況と、フォールス・コンセンサスの強さには、予想以上に弱い関係しか見られませんでした。これは人々が実生活での経験や人間関係からより強い影響を受けているためと考えられます。

組織においても、日常的な対面でのコミュニケーションや、組織内の人間関係の方が、フォールス・コンセンサスの形成に影響を与えている可能性があります。デジタルツールの活用は確かに重要ですが、それ以上に、実際の人間関係や対話の質を向上させることが、フォールス・コンセンサスの管理において重要な役割を果たす可能性があります。

抑制できる条件はあるのか

フォールス・コンセンサスは、適切な条件や施策によって抑制できることが明らかになっています。まず、情報提供とインセンティブを組み合わせたアプローチの有効性を取り上げましょう。

具体的な情報提供、特に異なる立場や視点からの情報が提供される場合、フォールス・コンセンサスは弱まる傾向にあります[5]。この効果は、社会問題に関する賛成派と反対派の見解を提示した実験で実証されています。

参加者は同世代の人々が異なる見解について話し合う様子を記録したビデオを視聴することで、自分とは異なる立場の意見をより実践的に理解できるようになりました。これは異なる意見が特殊なものではなく、それぞれに論理的な根拠を有していることを体感できたためです。さらに、この効果は適切なインセンティブと組み合わされることで、より強化されます。

このような条件下では、人々が自分の判断をより慎重に見直すようになります。時には、自分の意見や選択を過小評価する傾向さえ現れます。これは、多様な視点や意見を積極的に受け入れ、客観的な判断を行おうとする姿勢の表れと解釈できます。

チーム・マインドフルネスの実践も、フォールス・コンセンサスを弱める効果があることが分かっています[6]。この知見は、チームの協働や意思決定に関する研究から得られています。チーム・マインドフルネスの高いチームでは、メンバーが多様な視点や意見を受容し、固定観念から自由に新たな可能性を探求する姿勢が育まれました。これによってチーム全体としての認知的な偏りが自然と減少していったのです。

チーム・マインドフルネスとは、チームメンバーが協働して注意深く、柔軟に状況を理解し対応する能力を指します。チーム・マインドフルネスの核となるのは、三つの要素です。

第一に、多様な視点や意見を受け入れるオープンマインド。第二に、メンバーが主体的に議論に参加する姿勢。第三に、各メンバーが自発的に行動し責任を持って意思決定に関与するエンパワーメントです。

これらの要素は、単独でも効果を持ちますが、組み合わされることでより強力な影響力を発揮します。例えば、オープンマインドな環境で、メンバーが主体的に参加し、それぞれがエンパワーメントされている状態では、多様な意見が自然と表出し、建設的な対話が生まれやすくなります。

このような環境づくりには、リーダーシップの質が重要な役割を果たします。リーダーが自らの判断や価値観を絶対的なものとせず、異なる意見や視点を積極的に求める姿勢を示すことで、チーム全体のマインドフルネスが高まっていきます。

特に重要なのは、異なる立場からの情報を意識的に取り入れる仕組みです。研究では、対立する意見や異なる視点を提示することで、自分の意見が必ずしも支配的ではない可能性を認識し、より慎重な判断を行うようになることが示されています。

この効果は、大事な意思決定の場面で現れます。例えば、新規プロジェクトの方向性を決める際に、異なる部門や立場からの意見を意図的に収集することで、包括的な判断が可能になります。この過程で生まれる建設的な対立は、創造的な解決策を生み出す源泉ともなります。

定期的なフィードバックの機会を設けることも重要です。自分の判断や行動が他者にどのように受け止められているかを知ることで、自らの思い込みに気づく機会が生まれます。このフィードバックは、形式的なものではなく、率直な対話の場として機能させましょう。

各立場でできることを考える

マネジャーの立場では、部下の価値観の多様性を認識し、それを組織の強みとして活用することが求められます。同じチームで働いているからといって、全員が同じ考えを持っているわけではありません。年齢、経験、背景など、様々な要因によって異なる価値観が形成されています。

この多様性を前提として、それぞれの価値観や考え方を理解し、尊重する姿勢が大切です。定期的な対話の機会を設け、部下が安心して自分の意見を表明できる環境を整えましょう。意思決定の際には、意図的に異なる視点からの意見を求め、それらを取り入れる姿勢を示します。

また、フォールス・コンセンサスが生じやすい状況を意識的に把握し、それを防ぐための工夫も必要です。例えば、会議での発言が特定のメンバーに偏っていないかを確認したり、重要な判断の前に異なる立場からの意見を求めたりすることが効果的です。

さらに、チーム内での建設的な対立を促進することも一策です[7]。異なる意見や視点の存在を「問題」としてではなく、組織の成長のための機会として捉え、それらを活かすための場づくりを心がけることが求められます。

対して、メンバーの立場では、自分とは異なる意見や価値観の存在を意識すると良いでしょう。会議での発言や提案の際には、「他のメンバーは異なる視点を持っているかもしれない」という可能性を念頭に置き、自分の意見の背景にある考え方や価値観も併せて共有することが有効です。

自分の専門分野や経験とは異なる視点からの意見に対しては、その背景にある考え方や価値観を理解しようとする姿勢が求められます。異なる意見との出会いを、対立ではなく、学びと成長の機会として捉えることで、組織全体の視野を広げることができます。

自分の判断や行動に対して振り返りを行い、自らの思い込みや偏りに気づく機会を持つことも重要です。「これは当然だ」「みんなそう考えているはずだ」と感じる場面では、その前提を意識的に問い直してみましょう。

人事部門の立場では、社員が安心して意見を共有できる組織文化の形成を支援することが求められます。多様な価値観を認め合う風土づくりや、建設的な対話を促進する研修の提供、そして部門を超えた交流の機会の創出などがあり得ます。

採用や配置においても、多様な背景や経験を持つ人材を意図的に配置することで、組織の視野を広げることができます。ただし、形式的な多様性にとどまらず、実質的な対話と相互理解を促進する仕組みづくりが必要です。

おわりに

「正しい」と信じる確信は、時として落とし穴となります。その確信が「みんなも同じように考えているはずだ」という思い込みと結びつく時、組織は機会損失や判断の誤りに直面する可能性があります。

しかし、フォールス・コンセンサスへの理解を深め、それを克服するための取り組みは、リスク管理以上の価値をもたらします。それは、組織に新たな視点と創造性をもたらし、イノベーションの源泉となる可能性も秘めています。

多様な価値観や考え方を受け入れ、活かしていく能力は、これからの組織にとって必要不可欠なものとなるでしょう。その意味で、フォールス・コンセンサスへの対応は、組織の未来を左右する課題なのです。

Q&A

Q:フォールス・コンセンサスが特に強く現れる業界や職種の特徴はありますか。また、特定の企業文化や組織構造との関係はあるのでしょうか。

直接的な研究はありませんが、例えば、次のような傾向が推測されます。専門性が高い集団や、メンバーの属性が似ているなど、同質性の高い集団では、フォールス・コンセンサスが強く現れる可能性があるでしょう。

組織構造の面では、階層構造が強い組織でフォールス・コンセンサスが強く作用するかもしれません。さらに、部門間の交流が少なく縦割り構造になっている企業では、異なる意見に触れる機会が限られるため、フォールス・コンセンサスに陥りやすいと考えられます。

Q:フォールス・コンセンサスとアンコンシャス・バイアスの違いを教えてください。

フォールス・コンセンサスは、自分の考えを周囲の人々も同じように思っているはずだと思い込む現象です。一方、アンコンシャス・バイアスは、その対象が多岐にわたります。例えば、ジェンダーに関するもの、人種に関するもの、年齢に関するものなど、様々な形で存在します。フォールス・コンセンサスがアンコンシャス・バイアスとして機能する場合もありますが、必ずしもそうとは限りません。

Q:職場での上司と部下のコミュニケーションについて質問です。上司は自分の指示が正しく伝わっていると考え、部下は自分の理解が正しいと考えており、かみ合わない事態が度々起こります。思い込みが激しい場合、どのように改善できるでしょうか。

似ているはずの人が異なる意見を持っているという状況を体験することが重要でしょう。例えば、同じマネジャー同士でも、マネジメントに対する考え方は実際には大きく異なることがあります。しかし、同じマネジャーという共通点があるため、皆が同じような考えを持っているはずだと思い込みがちです。

自分と同じような属性を持つ人が異なる考え方を持っているということに気づくことで、自己の固定観念に気づきやすくなります。フォールス・コンセンサスが起こりやすい条件において、あえて異なる意見を引き出す機会を作ることで、多様な考え方があることを認識しやすくなります。

Q:頑固な上司にフォールス・コンセンサスを理解してもらうには、どのような点を考慮すべきでしょうか。

その上司が信頼を置く同じような立場の人(例えば、同期の管理職など)が異なる考え方を持っているケースを目にする機会を作ることです。

また、部下の中でも意見や価値観の違いがあることに気づいてもらう機会を設けることも良いでしょう。例えば、残業に関する考え方など、意見が分かれそうな話題について、部下それぞれが異なる意見を持っていることを示すことで、多様な考え方があることへの理解が深まる可能性があります。

Q:組織が拡大するにつれ、経営層が社員の思いを理解できなくなっているように感じます。サーベイ結果を示しても響いていない様子です。人事の立場から、上級管理職の意識を変えるために何ができるでしょうか。

組織の規模が大きくなるにつれて一般的に起こりやすい問題です。経営層が現場から距離が離れていくと、フォールス・コンセンサスが形成されやすくなります。

対策として、いくつかのアプローチが考えられます。第一に、経営層と現場の社員が直接対話する機会を設けることです。従業員との対話を通じて、社内に多様な考え方が存在することを実感できます。

第二に、サーベイ結果を示す際は、エピソードを併せて紹介しましょう。例えば、特定の部署で起きている具体的な事例を紹介することで、現実感を持って理解されやすくなります。

ただし、自分とは異なる意見に直面することは、経営層にとってもショックを伴う体験となり得ます。そのため、人事としては適切なフォローを行いながら、慎重にプロセスを進めていく必要があります。

脚注

[1] Marks, G., and Miller, N. (1987). Ten years of research on the false-consensus effect: An empirical and theoretical review. Psychological Bulletin, 102(1), 72-90.

[2] Krueger, J., and Clement, R. W. (1994). The truly false consensus effect: An ineradicable and egocentric bias in social perception. Journal of Personality and Social Psychology, 67(4), 596-610.

[3] Gilovich, T. (1990). Differential construal and the false consensus effect. Journal of Personality and Social Psychology, 59(4), 623-634.

[4] Bunker, C. J., and Varnum, M. E. (2021). How strong is the association between social media use and false consensus? Computers in Human Behavior, 125, 106947.

[5] Engelmann, D., and Strobel, M. (2000). The false consensus effect disappears if representative information and monetary incentives are given. Experimental Economics, 3, 241-260.

[6] Selart, M., Schei, V., Lines, R., and Nesse, S. (2020). Can mindfulness be helpful in team decision-making? A framework for understanding how to mitigate false consensus. European Management Review, 17(4), 1015-1026.

[7] Bauman, K. P., and Geher, G. (2002). We think you agree: The detrimental impact of the false consensus effect on behavior. Current Psychology, 21(4), 293-318.


登壇者

伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。

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