2024年11月28日
「これって私の仕事?」を解消する:“不適正タスク”の心理学(セミナーレポート)
ビジネスリサーチラボは、2024年11月にセミナー「『これって私の仕事?』を解消する:“不適正タスク”の心理学」を開催しました。
これは本当に私の仕事なのか。このような疑問を抱いたことはありませんか。
近年の研究で「不適正タスク」という概念が注目を集めています。これは、社員が自分の役割や専門性に合わないと感じる業務のことです。
一見些細に思える問題ですが、そうではありません。満足度低下、モチベーション喪失、燃え尽き症候群など、多くの悪影響をもたらします。
また、不適正タスクの影響は一時的なものではありません。持続的な悪影響をもたらすことも明らかになっています。本セミナーでは、不適正タスクに光を当て、その影響と解決策を探ります。
※本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。
私がやるべき仕事か?
この仕事は本当に私がやるべきものなのだろうか。誰しも一度はこのような思いを抱いた経験があるのではないでしょうか。日々の業務の中で、自分の専門性や役割とは異なると感じる仕事、あるいは必要性や意義を見出しにくい仕事に直面することがあります。
そのような時、私たちは戸惑いや不安、時には不満を感じることもあるでしょう。こうした感情は一時的なものとして消え去ることもありますが、時として深刻な影響をもたらすことがあります。モチベーションの低下、職場への不信感、さらには心身の健康にまで影響を及ぼすことさえあります。
従業員が自分の役割や専門性に合わないと感じる仕事、あるいは意味を見出しにくいと感じる仕事のことを「不適正タスク」と呼びます。近年の研究では、不適正タスクが従業員の職場の生産性に様々な影響を与えることが明らかになってきました。
本講演では、不適正タスクが職場にもたらす影響とその対策について考えていきます。一人一人が活き活きと働ける職場づくりのために、私たちはどのように不適正タスクと向き合っていけばよいのでしょうか。
不適正タスクとは何か
不適正タスクとは、従業員が自身の職業的アイデンティティや専門的役割から逸脱していると感じる業務のことです[1]。これは単なる「やりたくない仕事」や「面倒な仕事」とは異なります。
その人が築き上げてきた専門性や職業上の自己認識、さらには将来のキャリアビジョンとの間に大きな乖離があると感じられる仕事を指します。その人の専門性や経験が十分に活かせない業務や、職務上の役割や責任の範囲から外れていると感じられる業務が含まれます。
従業員が不適正タスクを経験する時、その心の中には様々な思いが巡ります。例えば、「この仕事は私の専門性を十分に活かせない」「キャリアプランで思い描いていた方向性と異なる」「もっと組織に貢献できる仕事があるはず」といった思いです。これらは仕事への不満に限定されず、より深い問題を示唆しています。
不適正タスクへの不満は、自分の職業的価値や専門性が正しく理解され、評価されていないという失望感の表れだと言えます。従業員は自身のスキルや経験を活かして組織に貢献したいと考えています。しかし、不適正タスクはその願いを阻害し、時として職業人としての自己肯定感さえも脅かすことがあるのです。
不適正タスクがもたらすもの
不適正タスクは、職場に様々な悪影響をもたらします。その影響の一つが、従業員の否定的な言動として表れます。
研究によると、これは不平や不満の表明以上の問題であり、不適正タスクを課された従業員は、組織の方針や上司の判断に対する建設的ではない批判を行ったり、仕事中に業務と関係のない活動に時間を費やしたりする傾向が強まります[2]。このような行動は、職場の雰囲気を悪化させるだけでなく、組織全体の生産性にも影響を及ぼします。
また、不適正タスクは従業員の対人関係にも影響を与えます。不適正タスクを経験する従業員が次第に無礼な行動を取るようになり、それが職場での孤立感を高めることが明らかになっています[3]。
例えば、同僚の意見を軽視したり、冷たい態度を取ったりするような行動が増加し、その結果、周囲との関係が疎遠になっていきます。この孤立感は、さらなるストレスや不満の原因となり、負の循環を生み出す可能性があります。
努力と報酬のバランスの崩れも深刻な問題です[4]。従業員は自分の専門性や役割に応じた仕事を期待して入社し、その期待に応えようと日々努力を重ねています。しかし、不適正タスクが増えると、その努力が正当に評価されにくくなります。
従業員は自分の専門性や経験を活かせない仕事に多くの時間を費やすことを余儀なくされ、その結果、本来持っている能力や可能性を十分に発揮する機会が失われていきます。
さらに、不適正な業務に時間を取られることで、重要な実績を上げる機会も減少し、昇進や昇給といった報酬にも影響が出てくる可能性があります。このような状況は、仕事への満足度を低下させ、長期的なキャリア形成への不安にもつながります。
不適正タスクは、従業員の心理的な資源も消耗させます。本来の専門性や役割とは異なる仕事を行う際、従業員は通常以上の精神的エネルギーを必要とします。新しい仕事を覚える負担だけではありません。
自分の専門性や経験と異なる仕事に従事する際、従業員は常に高い緊張状態を強いられます。慣れない作業の正確性を維持するために余分な注意力を要し、また、自分の本来の仕事のやり方や考え方を抑制しながら別の方法に適応しなければなりません。
このような継続的な自己抑制と緊張は、心理的な資源を消耗させ、疲労感や意欲の低下を引き起こします。その結果、仕事全般への関心や熱意が失われ、組織への貢献意欲も低下していくのです。
家庭生活への影響も看過できません。不適正タスクは、仕事と生活のバランスを損なう可能性があります[5]。不適正タスクに直面した従業員は、通常以上の時間と労力を要することが多く、その結果、勤務時間が長くなりがちです。
慣れない業務に対する不安や緊張から、必要以上に確認や修正を繰り返すことも少なくありません。本来の業務も並行してこなさなければならないため、業務量が実質的に増加します。これらの要因が重なり、残業の増加や休日出勤といった事態を招きます。
その結果、家族との時間が減少し、家庭での役割を十分に果たせなくなることもあります。さらに、仕事のストレスや不満が蓄積することで、家庭でのコミュニケーションの質も低下し、家族関係に緊張をもたらすこともあります。
不適正タスクの影響は一過性のものではありません。研究が示すところによると、不適正タスクを経験した従業員の心理的な影響は、翌日以降も継続することが確認されています[6]。
特に注目すべきは、自己評価の低下が比較的長期にわたって持続する点です。これは、不適正タスクが一時的な不快感以上の影響を及ぼすことを示しています。
自己評価の低下は、新しい課題への挑戦を躊躇させたり、創造的な提案を控えさせたりする要因となります。また、この影響は累積的な性質を持ち、繰り返し不適正タスクに従事することで、その影響がより深刻になっていく可能性があります[7]。
不適正タスクがマイナスに作用する理由
不適正タスクがこれほどまでに深刻な影響をもたらす理由は、それが従業員の職業的アイデンティティの核心に触れるからです[8]。
職業的アイデンティティは、その人が長年かけて築き上げてきた専門性、価値観、キャリアビジョンの総体です。不適正タスクは、この深い次元で従業員の自己認識を揺るがします。
それは「自分の価値が正しく理解されていない」という表層的な不満にとどまらず、「自分の専門性や経験が組織にとって重要ではないのではないか」「これまで積み上げてきたキャリアの方向性は間違っていたのではないか」といった、より本質的な自己否定につながる可能性があります。
また、自分に合わない役割を強いられることは、個人の内面により複雑な影響を及ぼします。それは業務上の不適合以上の問題を引き起こします。
従業員は長年の経験を通じて、自分なりの効果的な仕事の進め方、問題解決のアプローチ、価値判断の基準を確立しています。不適正タスクに直面すると、これらの確立された方法や基準を使うことができず、いわば「素人」として振る舞うことを強いられます。
この状況は、日々の業務遂行における不安やストレスを生むだけでなく、「自分にはこの仕事を適切にこなす能力がない」という自己効力感の低下を引き起こします。さらに、この経験が続くことで、「私は本当は何ができる人間なのか」という職業的なアイデンティティそのものが揺らぎ始めます。
不適正タスクは、従業員の公平性の感覚も揺るがせます。「なぜ自分だけがこのような仕事を任されるのか」という疑問が浮かんできます。
特に、同じ資格や経験を持つ同僚が自分の専門性を活かせる仕事に従事している場合、この感覚はより強くなるでしょう。このような状況は、組織の人材配置や評価の公正性に対する疑問を生み出します。
さらに、不公平感は、自分の将来のキャリア展望にも影響を及ぼします。「この状況が続くと、自分のキャリアは遅れをとってしまうのではないか」「組織は本当に私の能力や可能性を理解しているのだろうか」といった不安が生まれ、それが職場への信頼感を損ないます。
このような様々な心理的負担が重なることで、従業員は徐々にバーンアウトの状態に近づいていきます[9]。仕事への熱意の喪失、達成感の欠如、さらには職業人としての自己効力感の著しい低下につながります。
不適正タスクを少しでも減らすために
不適正タスクへの対応において警戒すべきは、従業員がそれを「当たり前」のものとして受け入れてしまうことです。研究によると、従業員は不適切な状況に適応することで、一時的に心理的なストレスを軽減させようとする傾向があります[10]。
しかし、この「適応」は表面的なものに過ぎず、むしろ問題を深刻化させる可能性があります。なぜなら、この適応によって、不適正タスクがもたらす本質的な問題、すなわち、専門性の未活用、キャリア発展の停滞、職業的アイデンティティの損傷などが見えにくくなってしまうからです。結果、問題の解決が先送りされ、従業員と組織の双方にとってより深刻な事態を招きます。
特に注意が必要なのは、タスクの適正性が状況によって変化し得るという点です。同じ業務内容であっても、それが一時的なものか恒常的なものか、どのような文脈で行われるのかによって、従業員の受け止め方は異なります。
例えば、組織の危機的状況での一時的な役割変更と、明確な理由のない恒常的な業務変更では、従業員の心理的な負担は異なります。このような違いを理解し、対応することが、不適正タスクの影響を最小限に抑えるために重要です。
具体的な対策としては、まず組織内での役割と責任の明確化が基本となります。各従業員の専門性や経験、キャリアの方向性を理解し、それらを組織の目標や戦略と効果的に結びつける必要があります。
また、各職位や役割に期待される責任と権限を明確にし、それらが適切に配分されているかを見直すことも重要です。この過程においては、従業員の意見や希望を積極的に取り入れ、実効性の高い役割分担を実現することが求められます。
また、タスクの実行中は継続的なサポート体制を整えます。これには、定期的な進捗確認やフィードバックはもちろん、必要な研修や教育機会の提供、同僚や上司からの知識・経験の共有、さらには心理的なサポートも含まれます。
従業員が困難に直面した際には、すぐに相談できる環境を整え、問題解決に向けた支援を提供することが求められます。様々なサポートにより、従業員は新しい課題に対して自信を持って取り組むことができます。
最後に、タスク完了後のフィードバックも忘れないようにしましょう。従業員が担当したタスクが組織にもたらした価値や成果を伝えます。数値的な成果だけでなく、プロセスの改善や他部門への波及効果、さらには組織文化への好影響なども含まれます。
また、そのタスクを通じて従業員自身が獲得した新しい視点やスキル、組織への理解の深まりなども一緒に考えることで、タスクの経験がその人の成長にどのように貢献したかを実感できるようになります。
包括的なフィードバックは、従業員の自信と成長意欲を高め、将来の挑戦に対する前向きな姿勢を育むことにつながります。
依頼者と遂行者の認識の隔たり
同じタスクであっても依頼する側と遂行する側で、その重要性や適切性の認識が異なることがあります。依頼者にとっては組織の目標達成に不可欠な重要タスクであっても、遂行者にとっては自身の専門性や役割から外れた不適正タスクと感じられる場合があるのです。
認識の隔たりが生じる背景には、いくつかの要因があります。まず、依頼者は往々にして組織全体の視点から業務の重要性を判断します。部門横断的な課題解決や、組織としての緊急対応の必要性から、特定の従業員に通常とは異なる業務を依頼することがあります。
一方、遂行者は自身の専門性や職務範囲を基準に業務を評価する傾向があります。その結果、組織にとっての重要性と、個人の職業的アイデンティティとの間にズレが生じるのです。
また、依頼者は多くの場合、タスクの全体像や戦略的意義を理解していますが、その文脈が遂行者に十分に共有されないことも、認識の隔たりを生む要因となります。
遂行者からすれば、突然、自分の専門外の業務を任されたように感じられ、そのタスクが組織においてどのような価値を持つのか理解できないまま、不適正感を抱くことになります。
この問題の解決には、まず依頼者側の意識改革が必要です。いかに重要なタスクであっても、それを遂行する側の立場や感情を考慮する必要があります。タスクの依頼に際しては、組織における位置づけや意義を説明し、なぜその人物が適任なのかという理由も含めて伝えることが重要です。
さらに、そのタスクが遂行者のキャリア開発にどのように寄与するのかという長期的な視点も共有すべきでしょう。一見、専門外に思えるタスクであっても、新しい視点や経験を得られる機会として位置づけられれば、不適正感は軽減される可能性があります。
このように、タスクの依頼者と遂行者の間の認識の隔たりは、コミュニケーションと相互理解によって橋渡しすることができます。それは業務の円滑な遂行以上の価値をもたらし、組織全体の成長と個人の職業的発達の両立につながっていくわけです。
組織と個人が不適正タスクと向き合う
働く人々の専門性や個性を最大限に活かすこと。これは、組織の成長と個人の幸せな職業人生の双方にとって欠かせない要素です。しかし、現実の職場では、様々な制約や状況の中で、必ずしも全ての業務が個人の専門性や志向に完全に一致するとは限りません。
重要なのは、不適正タスクの存在を単なる「仕方のないもの」として放置せず、その影響を理解し、最小限に抑える努力を続けることです。それは、個々の従業員の成長機会を最大化し、組織全体の生産性と創造性を高めることにつながります。
マネジャーの立場にある場合、部下一人一人の専門性とキャリアビジョンを理解し、業務配分における配慮を怠らないことが求められるでしょう。同時に、新しいタスクを依頼する際には、その意義と価値を説明し、必要なサポートを提供する姿勢が大切です。
一方、メンバーの立場にある場合、自身の専門性や役割に対する確かな認識を持ち続けることをお勧めします。不適正と感じるタスクに直面した際は、それを単に受け入れるのではなく、建設的な対話を通じて、より良い解決策を模索することが求められます。
組織と個人が互いを理解し、尊重し合う関係を築くことで、不適正タスクがもたらす負の影響は軽減できます。それは決して容易な道のりではありませんが、一人一人が活き活きと働ける職場づくりのために、着実に歩みを進めていく必要があるでしょう。
Q&A
Q:不適正タスクの中から仕事の意味や意義を見出せる人と、意味づけできない人の違いは何でしょうか。
この違いには主に二つの要因があります。一つ目は個人の能力や経験に関する要因です。意味づけのスキルは後天的に獲得するものであり、これまでに意味づけを行った経験がある人や、その方法を理解している人の方が意味を見出しやすいでしょう。
二つ目は環境要因です。意味づけは一人では難しく、視野が狭くなる可能性があります。しかし、先輩や上司、同僚のサポートがあれば、広い視点から仕事の意味を見出すことができます。
Q:営業からマーケティング部門に異動してきた取引先の課長が部下や取引先にパワハラをし、新人部下が複数名メンタルダウンしたり、代理店担当者に仕事を無茶な丸投げをして潰したりしています。不適正タスクを与えられた人が管理職に就くとリスクが高いのではないでしょうか。
不適正タスクは上司から部下へと連鎖的に降りていく可能性があります。上司がストレスや問題を抱えている場合、それが部下への不適正タスクとして表れることが指摘されています。
上司から侮辱的管理を受けたミドルマネージャーが、今度は自分の部下に対して不適正タスクを与えるという連鎖が生じることがあります。これは負のトリクルダウンとも呼べる現象で、上から下への悪影響の連鎖が、場合によっては、取引先を含むネットワーク全体にまで及ぶ可能性があります。
このことから、不適正タスクには何らかの原因がある可能性が高く、その原因を特定し解決しない限り、問題は繰り返し発生し得ます。
Q:若手社員の中に専門性が確立される前から不適正タスクを訴える傾向が見られます。これは本当に不適正タスクなのでしょうか。
若手社員の場合、現在の専門性よりも、将来のキャリアビジョンとの整合性が一つの判断基準となります。将来なりたい人材像や就きたい仕事から逸脱する業務であれば、不適正タスクと感じるのは自然なことです。
また、成長に必要な経験なのか、それとも不適正タスクなのかの線引きも重要です。この判断には次のような観点が役立ちます。
まず、その仕事に対する指導やサポートが提供されているかどうか。次に、難易度が段階的に設計されているかどうか。思いつきで適当に与えられる仕事は不適正タスクになりやすいですが、計画的で段階的な育成プロセスの一環として与えられる仕事であれば、たとえ現在のキャリアビジョンから多少逸脱していても、納得感が得られやすくなります。
Q:部署の性質上、専門性の高い技術者に事務作業を依頼せざるを得ない状況があります。どうすれば技術者のモチベーション低下を防げるでしょうか。
基本的には、技術者の時間をできる限り専門業務に充てられるよう、事務作業の効率化や分業化を進めることが重要です。
しかし、それでも事務作業が避けられない場合は、その目的と必要性をきちんと説明しましょう。なぜその作業が必要なのか、組織運営においてどのような意味があるのか、その作業を行うことで組織にどのように貢献できるのかを説明します。その上で、負担を軽減するためのツールを導入するなど、実務的な対策も併せて行うことで、モチベーション低下を緩和できる可能性があります。
Q:採用時のミスマッチを防ぐため、面接でどのような確認をすればよいでしょうか。
候補者の職業的価値観や望むキャリアパスについて、しっかりと理解を深めます。また、業務内容が明確な場合は、その内容だけでなく、なぜその業務が必要なのか、組織として何を期待しているのかも説明すると良いでしょう。
面接では、候補者が過去に専門外の業務にどう対応したかを聞くことで、不適正タスクへの対応傾向を把握することもできます。ただし、これは候補者を落とすための判断材料というよりも、組織として不適正タスクを改善していくきっかけとして捉えることが望ましいでしょう。
Q:ジョブディスクリプションが明確な組織では不適正タスクは発生しにくいのでしょうか。それとも別の形で課題が生じるのでしょうか。
ジョブディスクリプションが明確でも、不適正タスクは様々な形で発生します。例えば、組織変革が必要な際に、職務範囲が明確に規定されているがゆえに、その範囲外の業務が不適正タスクとして認識されてしまう可能性があります。
また、事前に規定された業務以外の仕事が発生した場合、それが特定の従業員に集中してしまう傾向もあります。これは、誰の職務範囲にも入らない業務を誰かが担当しなければならない状況で起こりやすく、結果として一部の従業員に不適正タスクが集中するという問題につながります。
このように、不適正タスクは組織が存続する限り何らかの形で発生する可能性がある問題として認識し、継続的に対策を考えていく必要があるでしょう。
脚注
[1] Ding, H., and Kuvaas, B. (2023). Illegitimate tasks: A systematic literature review and agenda for future research. Work & Stress, 37(3), 397-420.
[2] Zhao, L., Lam, L. W., Zhu, J. N., and Zhao, S. (2022). Doing it purposely? Mediation of moral disengagement in the relationship between illegitimate tasks and counterproductive work behavior. Journal of Business Ethics, 179(3), 733-747.
[3] Ahmad, A., Zhao, C., Ali, G., Zhou, K., and Iqbal, J. (2022). The role of unsustainable HR practices as illegitimate tasks in escalating the sense of workplace ostracism. Frontiers in Psychology, 13, 904726.
[4] Omansky, R., Eatough, E. M., and Fila, M. J. (2016). Illegitimate tasks as an impediment to job satisfaction and intrinsic motivation: Moderated mediation effects of gender and effort-reward imbalance. Frontiers in Psychology, 7, 1818.
[5] Zeng, X., Huang, Y., Zhao, S., and Zeng, L. (2021). Illegitimate tasks and employees’ turnover intention: A serial mediation model. Frontiers in Psychology, 12, 739593.
[6] Eatough, E. M., Meier, L. L., Igic, I., Elfering, A., Spector, P. E., and Semmer, N. K. (2016). You want me to do what? Two daily diary studies of illegitimate tasks and employee well-being. Journal of Organizational Behavior, 37(1), 108-127.
[7] Semmer, N. K., Jacobshagen, N., Meier, L. L., Elfering, A., Beehr, T. A., Kalin, W., and Tschan, F. (2015). Illegitimate tasks as a source of work stress. Work & Stress, 29(1), 32-56.
[8] Ding, H., and Kuvaas, B. (2023). Illegitimate tasks: A systematic literature review and agenda for future research. Work & Stress, 37(3), 397-420.
[9] Ouyang, C., Zhu, Y., Ma, Z., and Qian, X. (2022). Why employees experience burnout: An explanation of illegitimate tasks. International Journal of Environmental Research and Public Health, 19(15), 8923.
[10] Fila, M. J., and Eatough, E. (2020). Extending the boundaries of illegitimate tasks: The role of resources. Psychological Reports, 123(5), 1635-1662.
登壇者
伊達 洋駆 株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。著書に『60分でわかる!心理的安全性 超入門』(技術評論社)や『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)、『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)などがある。2022年に「日本の人事部 HRアワード2022」書籍部門 最優秀賞を受賞。東京大学大学院情報学環 特任研究員を兼務。