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コラム

新人・若手社員のための質問方法:仕事の効率を上げる聞き方とは(セミナーレポート)

コラム
 

ビジネスリサーチラボは、20248月にセミナー「新人・若手社員のための質問方法:仕事の効率を上げる聞き方とは」を開催しました。

仕事で分からないことがあれば、分かる人に聞く。多くのビジネスパーソンが日常的に行うことですが、奥深い仕事術ともいえます。求めている的確な回答を得るには、聞き方のハウツーだけでなく、相手との関係性やタイミングなど、多くの事柄を考慮する必要があります。本セミナーでは、「質問」に関する背景・方法・有効性に関する学術研究を紹介し、個人と職場の双方にとって効果的な実践法を考えます。

※本レポートはセミナーの内容を基に編集・再構成したものです。

背景と注目する三つの要因

皆さんも研修や引き継ぎの場面で「わからなかったら質問してください」と言われた経験があると思います。このような言葉はよく使われますが、例えば、「こんな基本的なことを聞いてもいいのか」「こんなことを聞いたら迷惑ではないか」といった具合に、質問する側には様々な悩みがあるものです。

こうした悩みは特に、学ぶ機会が多い分、質問に対する悩みも多い新人や若手社員に多く見られると考えられます。このような背景から、質問する側が抱える悩みを掘り下げ、そしてその支援策を考えます。

本セミナーでは、今回は質問に関連する三つの要因を考え、そこから質問する側の悩みを整理していきます。三つの要因とは、質問する本人、質問に答える側、質問する側と回答する側の関係性です。これらの要因に注目して、質問する側が抱える悩みについて研究を参考に掘り下げ、最後に、その支援策を提案します。

質問内容をどう整理するか

質問することの効果とそのメカニズム

一つ目のパートは、「質問内容をどう整理するか」についてです。これは、冒頭で想定した三つの要因のうち、質問する側に紐づく悩みです。つまり、自分の中で質問したい内容を上手く整理しづらい、という悩みを掘り下げます。

関連する研究分野として、教育系の質問に関する知見を紹介していきます。教育系の研究では、例えば、学生による質問の学習への効果を調べる研究が多くあります。こうした研究を、どのような質問が思考の整理につながるのかを考えるヒントにしましょう。

最初のポイントとして、質問すること自体が有益であることが研究で報告されています。複数の研究をまとめたレビュー論文によると、質問を生成したり、仲間同士で質問しあう活動が学習効果に結びつくことが確認されています。また、初めはうまく質問できずとも、質問を作る練習をすることで、次第に成果へつながっていくことが示されています。

質問には効果があるとお話しましたが、その効果がどのようなメカニズムで生じるのかについても、いくつかの研究が存在します。一つ目のメカニズムは、「知識が増える・整理される」という点です。

質問するという行為は、そもそも自分が理解できていない部分や知らないことがあるからおきるものですから、質問への回答から新しい知識が得られます。さらに、質問を受けた側が「もしかして誤解しているのでは?」と気づくこともあります。その場合、質問の受け手が補足説明を加えたり、誤解を修正してくれることもあります。

二つ目のメカニズムは「情報を鵜呑みにしない姿勢につながる」という点です。質問をするということは、今ある情報に疑問を持っている状態だとも言えます。さらに、そうした疑問は「この理解が正しいなら、次はこうなるはずだけど…」など、論理的な思考と結びつけて考えることにつながります。つまり、質問を積極的にすることで、自分なりに情報を解釈し、判断しようとする姿勢が身につきます。

三つ目のメカニズムは「思考を俯瞰する力につながる」という点です。少し専門的な表現になりますが、質問を作り出す行為は、「メタ認知」と呼ばれる思考の働きとの関わり深いと指摘されています。メタ認知とは、自分の思考や理解状況を客観的に見つめ、調整する力のことです。質問をする際には、まず自分がどこまで理解しているのかを確認して、その不明点などを尋ねます。つまり、質問によって、自分の思考を自分で見直す、俯瞰することにもつながるので、質問内容の理解も深まるということです。

質問を「目的」で整理する

こうした背景を踏まえ、「質問の内容はどのように整理できるのか」について提案します。提案のポイントは、研究に基づく質問の「分類」です。例えば、いくつかの質問方法の効果を比べたり、ある教科で使った質問の仕方を数学でも利用できるように支援するなど、教育現場のニーズとして、質問の分類が存在しています。

様々な質問の分類があるなかで、今回は実務に応用しやすい例として、質問の「目的」に応じて分ける分類を提案します。質問の目的とは、質問をして得られた回答をどのように活用しようとしているのか、という点に注目したものです。

より具体的に説明しますと、質問の目的は大きく5つに分けることができます。一つ目は「記憶・理解」です。これは教わった知識を覚えたり、理解するための質問です。例えば、教わったソフトの使い方について「これで合っていますか?」と質問することで、学んだ内容を確認し理解を深めようとするケースです。

二つ目は「適用」で、学んだことを別の場面で活用するための質問です。たとえば、教わったデータ分析の方法を、新しいデータに適用しようとした際に「この方法だとうまくいきませんが、何が問題でしょうか?」と質問するような場面が想定されます。

三つ目は「分析」です。これは、問題解決のプロセスやその構成要素を整理するための質問です。たとえば、「A社の案件についてBさんと分担してもよいでしょうか?」といったように、進め方について確認するための質問が考えられます。

4つ目は「評価」です。これは様々な方法を評価するための質問です。「この方法と別の方法でどちらが適しているでしょうか?」と質問して、やり方が正しいかどうかを評価するために尋ねる場面が想定されます。

5つ目が「創造」です。これは新しい知識やアイデアを生み出すための質問です。たとえば、「この企画案に独自性があるといえそうですか?」といった具合に、今までにないものを作り出すために意見を求める質問が該当します。

こうした分類を参考にすることで、今、自分が抱えているのはどのような質問なのかを整理しやすくなります。あるいは、「記憶・理解」や「適用」のように、既に学んだ内容に関わる基礎的な質問と、「分析」「評価」「創造」のように、臨機応変な対応に関わる応用的な質問に分けることで、質問すべきかの判断基準にすることも、有用な活用法と言えます。

「質問のしづらさ」をどうすべきか

「費用対効果」の低さを感じることへ

二つ目のパートは、「質問のしづらい」という悩みについてです。冒頭で挙げた三つの要因のうち、質問する側と回答する側の関係性から生じる悩みです。この悩みについては、職場での対人関係に注目する研究領域として、心理学系の研究を参考にします。両者の関係性の中で生じる悩みを解消し、質問をする、あるいは質問に答えるという関係が、より効率的に機能するための手掛かりが見つけましょう。

今回は、質問する側の心理状態に関連する現象として、二つのテーマに注目した研究を見ていきます。一つ目は、質問するためにかかる「コスト」です。質問をすることに「費用対効果」の低さを感じるという報告があります

具体的には、質問をすることで相手が不快になるかもしれない、つまり、質問に答える側に負担がかかると感じることが挙げられます。さらに、相手が不快に思わないよう、質問する側も質問内容を丁寧に考えるため、こちらにもコストがかかります。このように、質問しようとするたびにコストを感じると、質問することを負担と捉え、「質問しない方が得だ」と思ってしまうこともあるわけです。

こうしたコストについて、どのように向き合うべきかという点で一つの提案があります。それは、「相手のコスト」というのは多くの場合、杞憂であることが多いということです。

ある研究では、相手の給与やセクシュアリティの質問など、デリケートな内容を質問するよう求めて、「相手にどのように思われているか」を予測してもらいました。そして、実際にその質問をされた側のも「質問した側をどう思ったか」を尋ね、それらを比較したのです。

その結果、質問された側は、質問する側が予想していたほど不快に感じていないことが明らかになりました。また、例えば天気の話題のような無難な質問をした場合と比較しても、デリケートな質問をしたことで相手が感じる不快感に大きな差はありませんでした。

コストに関してもう一つの点は、「大局的な視点」を持つことが有効だということです。具体的には質問すること自体が企業全体のコスト削減に繋がるという考え方があります。

例えば、自分でわからないことを全て調べると30分かかる場合でも、詳しい人に質問して5分で答えを得られれば、25分の時間差を別の作業に充てることができます。また、質問に答える側も、教えることで自分の理解が深まることが確認されており、答える側の作業効率の向上につながることが期待できます。

質問に「リスク」を感じることへ

質問する側に関連するもう一つの心理的現象として、「リスク」に注目した研究をご紹介します。端的に言えば、質問すること自体にリスクを感じることがあるということです。

質問するという行為は、言い換えると「分かっていない」と相手に示すことになります。それにより、質問を受ける側からの低評価につながるかもしれないと感じた場合、質問がしづらくなると報告されています。

つまり、質問をすれば評価が下がるが、質問しなければその評価を保てると考えて、沈黙を選んでしまうのです。これは非常に人間らしい反応で、短期的には自分の評価を守るリスク回避の手段となります。しかし、長期的に見ると、早い段階で質問していれば軽い問題で済んだものを、後になって問題が深刻化するというリスクも抱えることになります。

こうした質問のリスクにどう対応するかという観点について、実は、リスクも杞憂である可能性が報告されています。ある研究では、不手際で防犯ゲートを鳴すなど、様々な失敗をしたことを想像してもらい、それを見た他人が自分をどう評価するかを予測してもらいました。

そして、先ほどと逆に、同じ失敗を見たときにどう思うか、という観察側の評価とを比較しました。すると、失敗の観察側の評価は、失敗をした側が思うほど、厳しい評価をしていなかったのです。

もう一つ重要なポイントが、「弱さの開示」は高評価につながることです。失敗や理解不足を他人に伝えることは、伝える側にとって「弱さ」を示す行為であるため、不快感を伴いがちです。しかし、その「弱さ」を開示してもらった相手は、その行動への勇気を感じたり、率直に話してくれることで信頼感を抱くことが分かっています。

ここまで見てきた二つの現象を考えると、コストやリスクを恐れて質問を控えるよりも、積極的に質問をする方が得策だと言えます。沈黙が無難だと考えがちですが、チーム全体の視点で考えると、質問する方が建設的だということです。

どのような聞き方が良いか

回答者は三つの反応を示す

三つ目のパートに移ります。ここでは、冒頭で示した質問に関わる要因のうち、質問の回答側に注目し、「どのような聞き方が良いか」という質問側の悩みについて掘り下げていきます。

このパートでは、社会学系の研究を参考にします。社会学系の研究とは、人々に対するアンケートや面接を通じて、その考えや意見を集める研究領域です。つまり、人々の回答を数多く扱う分野であるため、回答者に真剣に考えて答えてもらえるように、どのような質問の仕方をするべきか、その工夫が重要になるのです。そこで、これらの研究知見から、相手にとって答えやすい質問方法を、より直接的に考えるためのヒントを得ることができます。

その研究知見の一つとして、質問を受けた側の反応が、大きく分けて三つのタイプに分類できると考えられています。一つ目は「適切な回答」です。これは質問された内容によく合致し、質問した側に参考になる反応のことです。

二つ目は「不確実な回答」です。このタイプの回答には憶測や推測が含まれます。つまり、「多分こうかもしれない」「おそらくこうだと思う」といった形で、確実ではない情報が含まれる回答です。そのため、参考にする際に注意が必要になります。

三つ目は「実質的ではない回答」です。これは、質問に対して「わからない」と答える場合など、質問に対する具体的な解答が得られない反応を指します。このような回答は、質問内容に対して参考になる情報を提供していない場合が多いです。

次に、こうした異なる反応が、どのように起きるのかという点について説明します。ポイントは、質問を受けた側の「質問の情報処理」です。

具体的には、質問を受けた側の情報処理は、四つのステップに分かれると考えられています。一つ目は、「質問を理解する」段階です。質問を受けた際に、その質問が何を求めているのかを理解する、どのような情報を提供すればよいかを把握するプロセスです。

二つ目は「記憶の検索」です。質問に答えるために、自分の知識や過去の経験を思い出す段階です。これまでの経験や、持っている知識をもとに、回答を考えます。

次に三つ目のステップが「回答の評価」です。ここでは、考えついた答えが質問に対して適切かどうかを確認します。相手の欲しい情報になっているか、自分の回答がどの程度有用かを評価するプロセスです。

最後の四つ目が「伝え方の考察」です。ここでは、用意した回答をどのように伝えるかを考えます。そのまま率直に伝えるのか、相手にわかりやすいように少し言い方を変えるのか、場合によっては少し脚色することもあります。

これら四つのステップを踏んで回答が形成されますが、どれかのステップで問題が生じると、適切な回答が得られにくくなることが研究で示されています。

さらに、上記の4つステップと三つの反応の関連として、より詳しいメカニズムも報告されています。まず、「質問の理解」が難しい場合、つまり、質問の意図や内容がはっきりとわからないと、回答者側は「何が聞きたいのだろう」と考え直すことが多くなり、質問の意図を聞き返したり、「多分こうかもしれない」といった「不確実な回答」が生じやすくなります。

次に、「回答の評価」が難しい、つまり、質問は理解できても「どう答えてよいか」がわからないという状態では、「不確実な回答」をせざるを得なかったり、特に「わからない」と「実質的でない回答」が答えてしまうこともあります。

ポイントは「わかりやすさ」「答えやすさ」

こうした回答側の反応のメカニズムを踏まえて、質問の仕方をどう工夫するのがよいか、いくつかのポイントを具体的に紹介します。一つ目に、「相手のせいにしないこと」が大切です。

その背景として、例えば年齢や教育歴などの相手の属性よりも、質問に含まれる要素が、回答の反応に強く影響していることが示されています。そのため、まずは自分が質問の仕方を工夫することで、適切な回答を引き出せる可能性が高まるということになります。

二つ目のポイントは、「質問のわかりにくさを減らすこと」です。これは、質問の内容がわかりにくいと適切な回答が得られにくくなる、という先ほどの研究結果を踏まえたものです。

具体的には、回答側が知らない用語や普段使わない言葉、定義が必要な専門用語が含まれている質問は、わかりにくさを増す要因になります。また、質問が聞き取りづらいと、それだけで理解が妨げられることもあります。このため、相手が知っている言葉を使い、明確でわかりやすい口調で質問することが重要です。

三つ目のポイントは「回答しやすさを高める質問をすること」です。これは、答えにくさに関わる、次の三つの原因を減らす対応と言えます。

まず、時間の見積もりや割合など「数や量で答える必要がある質問」です。つぎに、「選択肢が多い質問」です。例えば、「6パターンのどれが適切か」など、選択肢が多くなると、どれを選んでいいのか迷いやすく、回答しづらくなります。

逆に、「はい」か「いいえ」で答えられるクローズドクエスチョンは質問に答えやすいことが確認されています。これらのことを踏まえて、数や量を答える必要がある場合は、選択肢を明示して質問し、できるだけ選択肢を少なく絞って質問することで、相手の答えにくさを減らすことができます。

望ましい質問を増やすために

「目的」を整理する

最後のパートとして、望ましい質問を増やすことを目指して、どのような練習や支援ができるかについて、これまでの三つのパートで見てきたポイントを踏まえて提案します。

まず一つ目の練習方法として、「質問の目的を整理する」という提案です。この狙いは、質問の目的を、回答者に伝わりやすくすることです。また、質問の整理が自分の理解につながる、質問の意図が分かりやすいと相手から適切な回答を得やすくなる、という研究知見に基づくものです。

具体的な練習法は、質問に関する内容を図示することです。図に表すことで、自分の理解状況を俯瞰、つまり、どこがわかっていて、どこがわかっていないのかを把握するメタ認知の発揮につながり、質問をする際の助けになります。

どのように図示するかの具体例としては、マインドマップの作成があります。これは、学習内容を要素ごとに可視化するというもの、教育現場でも実践されています。実務の例として、あるプロジェクトにおいて、ソフトウェアを活用する場面を考えてみましょう。

プロジェクトの目的に応じて、必要になる作業を把握したり、ソフト自体の使い方など理解するといった工程が必要なるはずです。こうした関連要素を、図に起こして表現します。図示することで、自分が理解できている部分はよく整理され、逆に整理できない部分は理解が不十分であることが見えてきます。

テンプレートを作る

質問の二つ目の練習方法は、「テンプレートを作る」ことです。この狙いは、質問する側と答える側の双方のコストを下げることです。質問する側が、質問を考えるのにコストを感じること、また、質問が答えやすいと適切な回答が得られやすくなる、という研究知見を踏まえて、テンプレートを作成するのが有効と言えます。

具体的には、質問の「目的」の明示、その目的に至った「思考過程」、「回答の選択肢」という三つの要素を含むテンプレートが一つの案です。例えば、以下のように活用できます。

  • 「ソフトの使い方に悩んでいます」…質問の目的
  • 「以前教わった方法を適用しているはずなのにうまくいかない」…思考過程
  • 「理解や適用方法に誤りがあるのでしょうか」…回答の選択肢

「質問の目的」は、上述の6つのいずれかに分類することを目指すと良いでしょう。「思考過程」として、質問するまでに考えた過程や実際に取り組んだことを明示すると、自身の思考の整理することや、相手に状況が伝わりやすくなるという効果が期待できます。最後に、「回答の選択肢」を提示することで、相手の応えやすさを高めることにつながります。

練習相手を見つける

最後は「練習相手を見つける」という対策です。この狙いは、質問することへのハードルを下げることと、オフィスでの練習機会を増やすことにあります。質問する側は、コストやリスクを感じて質問がしにくくなっています。そこで、適切な相手と練習を重ねることができれば、質問のスキルアップを目指すことができます。

練習相手としては、情報を整理してくれたり、真摯に対応してくれる相手が望ましいでしょう。質問には、自分の理解状況を客観的に見つめることが重要です。そこで、情報の整理を手伝ってもらったり、質問を受ける側としてどう聞こえるのかを教えてもらうことが、質問のスキルアップへの手助けになります。

また、相手から否定的な評価を受けるリスクを感じる場合、それが質問しづらさに繋がることがあります。そのため、上手く説明ができない、理解できていない部分があるとしても、親身に対応してくれる相手が適任です。

こうした点から、練習相手としては、上司の方よりも同僚にお願いするほうが良いかもしれません。練習の際には、例えば「この質問の意図が伝わっていますか?」と、自分の質問が相手へどのように伝わっているかを確認してみましょう。あるいは、「この質問は答えやすいですか?」といった、コストや答えやすさについてもフィードバックを求めるのもよいでしょう。

Q&A

Q1:部下の質問がわかりにくい場合、上司はどのような手助けができますか?

今回の内容を踏まえて、「質問の目的」を整理するという手助けが考えられます。例えば、「その質問の意図はこういうことか?」と確認することで、双方の認識を合わせることができます。

また、確認の質問を返すことで、部下の理解を促す効果も期待できます。上司が確認を取りながら答えることで、部下も「自分はここがわかっていなかったのか」と再確認でき、メタ認知的な学びが促進されます。

Q2: 上司から部下への質問に関する提案はありますか?

上司から部下への質問のポイントとして、部下が本音を話しやすくするための工夫が必要です。例えば、部下が抱える悩みや、会議やディスカッションの場で、部下の意見を尋ねることがあると思います。そうした場面での上司からの質問に、部下が本音で答えないケースも考えられます。

理由の一つは、部下が自己開示をしにくいと感じるからです。自己開示は、自分の弱さや悩みをさらけ出すことを意味するため、部下は上司に対して自分の不安や課題を伝えにくいと感じることが多いです。

たとえば、上司が先に自分の経験や本音を話すことで、部下も話しやすくなることが知られています。上司が率直に自分の意見を伝えることで、部下は「この上司には本音を話しても大丈夫」と感じ、より深いコミュニケーションが生まれます。日頃からの信頼関係の構築が重要であり、上司の自己開示がその信頼を深めるきっかけになります。

Q3: 「質問をした人の評価を下げる」という上司にはどの対応できますか?

質問によって評価が下がるというのは、非常にデリケートな問題です。本来、質問すること、それに答えることは、組織全体にポジティブに作用するはずです。そのため、まずはミクロの対応として、そういった上司の対応があることを、関係者間で情報を共有しましょう。

そのうえで、その上司との質問の内容やその様子が、当事者だけに閉じることをできるだけ防ぐことが必要です。質問時の状況を、その上司以外も知っている環境を作るため、複数人で話すようにしたり、周囲の人から状況を聞き取ることが大切です。

また、組織として質問の重要性を理解し、その内容が評価基準に組み込まれないようにするなど、マクロ的な対応も必要です。状況に応じて対応が変わりますが、質問することをネガティブに評価しない組織文化を醸成することが理想です。


登壇者

黒住 嶺 株式会社ビジネスリサーチラボ フェロー

学習院大学文学部卒業、学習院大学人文科学研究科修士課程修了、筑波大学人間総合科学研究科心理学専攻博士後期課程満期退学。修士(心理学)。日常生活の素朴な疑問や誰しも経験しうる悩みを、学術的なアプローチで検証・解決することに関心があり、自身も幼少期から苦悩してきた先延ばしに関する研究を実施。教育機関やセミナーでの講師、ベンチャー企業でのインターンなどを通し、学術的な視点と現場や当事者の視点の行き来を志向・実践。その経験を活かし、多くの当事者との接点となりうる組織・人事の課題への実効的なアプローチを探求している。

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