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コラム

退屈の科学:退屈がもたらす影響とその対策

コラム

 

ビジネスの現場において、退屈を感じることは少なからずあります。結論の出ない会議、単調なデータ入力、進展が見られないプロジェクトなどに直面すると、誰しもが退屈を感じることでしょう。

こうした状況において、現代のビジネスパーソンはオンライン会議中に別の資料作成やメールの返信等を行うことがあります。その良し悪しは別として、退屈を感じたときに効率的に時間を使って退屈をしのぐ手法を取り入れることも現実的にはあるでしょう。

退屈とはどのような心理状態なのか、また刺激があれば凌げるのかといった疑問が浮かんできます。このコラムでは、退屈に関する研究知見を紹介し、人々がどのような仕事をするときに退屈を感じるのか、退屈を感じやすい人とそうでない人の違い、退屈がどのような要因に影響を受け、仕事のパフォーマンスや健康にどのような影響を与えるのかについて探ります。

また、退屈は悪い面だけでなく良い面があるのかについても考察します。これらの研究を通じて、退屈についての理解を深め、組織や人を管理する際のヒントを提供します。

退屈の原因は、タスク、環境、個人差、人と状況

研究における退屈の代表的な定義は「一過性の感情状態であり、現在の活動に対する興味の欠如を広く感じるもの」とされています[1]

まず、退屈のレビュー論文を紹介します。この論文では、退屈の原因を、タスク、環境、個人差、人と状況の適合性に分け、即時の結果と長期的な結果で分析しています。

退屈に関する研究の多くは、反復的作業または機械的な組立作業、警戒または検査作業、追跡、運転、操縦などの連続的な制御作業など、刺激が極端に少ないタスクに焦点を当てています。このような作業では、注意は必要であるものの、見返りに与えられる刺激はほとんどなく、長時間続くことで生理的覚醒が低下し、退屈が生じることは明白です。

逆に、スキルの多様性、タスクの固有性、タスクの重要性、自律性、フィードバックが高いタスクは、退屈と評価されにくいとされています。

また、作業そのものがほとんど意味のある刺激を与えない場合、周囲の作業環境や、仕事体験全体が退屈度を決定する上で重要になるとされています。つまり、環境は退屈を強めることもあれば、軽減することもできるのです。

人の個人差も退屈の原因となります。個人差には、能力、年齢、性格、精神的健康など様々な側面があり、退屈を感じやすいタイプの人が存在します。例えば、外向性の高い人は内向的な人よりも単調な作業に退屈しやすいとされています。外向性の高い人は、覚醒と活性化の最適レベルを維持するために、外的刺激が非常に重要だからです。

さらに、人と状況が適合しているとき、例えば、仕事が充実している人や、性格や能力が仕事に適している人は退屈を感じにくいと考えられます。

退屈が引き起こす結果は即時的と長期的の2段階に分けられます。即時的な反応としては、パフォーマンスの低下や自己管理の強化、刺激の追求、破壊的/逸脱的行動、怒り、敵意、落ち着きのなさが見られます。長期的には、不満や欠勤、離職、さらには身体的・精神的健康問題にまで影響を及ぼす可能性があります。

このレビュー論文では、退屈の原因として、タスク、個人差、人と状況との適合を含む個人の認知プロセスに焦点を当てています。これらの知見を活用することで、職場における退屈を理解し、効果的な対策を講じる手助けとなるでしょう。

仕事の退屈さと欠勤率に有意な関係

仕事の退屈さと欠勤率の間に有意な関係があることが立証されています。米国南東部の製造工場で働く292人の労働者を対象とした研究では、仕事の成果(満足度、欠勤率、勤続年数)と、退屈度および退屈傾向との関係が調査されました[2]

調査によると、退屈度が高い人は、仕事そのもの、給与、昇進の機会、上司による監督、同僚に対する不満が有意に高いことが示されました。さらに、仕事に退屈している人の欠勤率は有意に高く、組織在籍期間も長かったという結果でした。つまり、勤続年数の長い人ほど、自分の仕事が退屈であると認識しているのです。

一見すると、職務退屈度と組織在職期間の関係は直感に反するように見えますが、具体的には、同じ職務に繰り返しさらされること、つまり長い期間勤続することで覚醒レベルが低下し、満足感が低下する結果、退屈感が増大しつつも組織に残ると考えられます。

この知見は、職務特性モデル[3]を間接的に支持するものであり、仕事/職務設計の取り組みに示唆を与えます。つまり、仕事を充実させる(そして退屈を減らす)試みが、欠勤や不満を減らすのに有益である可能性を示唆しているのです。

具体的な実務的対応としては、ジョブ・ローテーション(計画的社内異動)やジョブ・エンリッチメント(職務充実)[4]といった手法が効果的です。これらの手法は、従業員に新たな刺激を提供し、退屈を感じにくくすることで、職場の満足度を高め、欠勤率を低下させる可能性があります。

時間管理能力が高いと注意散漫になりにくく退屈しない

先の研究はブルーカラー職種についてでしたが、ホワイトカラー職種については、どのような研究がなされているのでしょうか。次に紹介するのは、オランダのホワイトカラー従業員166人を対象に行われた職場の退屈に対する一時的な解消策の調査です[5]

この研究は、自己調整理論に基づき、気晴らしと仕事への無関心という2つの反応を定義しました。さらに、時間管理スキルと積極性スキルという2つの従業員コンピテンシーを考慮し、ある個人が他の個人よりもこれらの戦略を取りやすいかどうかを調査しました。

自己調整とは、「思考、感情、行動の調節を含め、時間の経過や状況の変化の中で、個人が目標に向けた活動を導くことを可能にするプロセス」と定義されています[6]つまり、状況に応じて自己の情動や行動を制御することです。自己調整理論は、従業員が自分の望むパフォーマンス・レベルと不満な職場環境との間の不調和を容認し、軽減し、最小化するために即座に努力することを提案しています[7][8]

調査の結果、職場の退屈は、注意散漫と正の相関があることが分かりました。さらに、職場の退屈と注意散漫との関係は、時間管理スキルが高い従業員ほど弱いということが示されました。つまり、時間管理スキルが高い従業員は、職場の退屈さを感じにくく、注意散漫になることも少ないのです。

この結果から、時間管理能力の高い従業員は職場が退屈であることを理由に注意散漫になることは少ないため、組織は時間管理能力が高い従業員から最も恩恵を受ける可能性があると指摘されています。さらに、積極性スキルも同様に、退屈を感じにくくする要素として重要であることが示唆されています。

仕事の退屈さは、職務満足度や組織コミットメントを低下させる

仕事の退屈は、バーンアウトやワーク・エンゲイジメントとはどのような関連があるのでしょうか。ワーク・エンゲイジメント向上の重要な理論の一つである、仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル: Job Demands-Resources model[9]を適用した研究を紹介します[10]

JD-Rモデルは、仕事の要求(Job Demands)と仕事の資源(Job Resources)という二つの主要な要素に焦点を当てています。

  • 仕事の要求:持続的な肉体的・精神的努力を要求し、特定の生理的・心理的コストを伴う仕事の側面を指します。
  • 仕事の資源:仕事の目標達成に役立ち、仕事の要求を減らし、個人の成長と発達を刺激する可能性のある仕事の側面を指します。

6315人のオランダの従業員を対象に、職場における退屈度を評価する研究が行なわれました。その結果バーンアウトとワーク・エンゲイジメントは区別できることが示されました。また、仕事の要求と仕事の資源が多いとき、従業員は退屈をより感じることが明らかになりました。

これにより、適切な仕事の資源を提供し、仕事の要求のバランスをよく設定することが、退屈感の軽減に効果的であることがわかります。

さらに、仕事の退屈さは職務満足度や組織コミットメントと負の相関があり、離職意向とは正の相関があることも指摘されました。すなわち、仕事が退屈であると感じる従業員は、職務に対する満足度や組織へのコミットメントが低く、離職を考える傾向が強いのです。

ジョブ・クラフティングが退屈感を軽減

別の研究では、職務の工夫に焦点を当て、退屈な行動が抑うつ、不満、苦痛、非生産的な仕事行動につながる一方で、ジョブ・クラフティングが、仕事に関連した退屈感とその否定的な結果を軽減できることを提起しています[11]ジョブ・クラフティングとはWrzesniewski & Dutton(2001)によって提唱された概念で、「仕事のやりがいや満足度を高めるために、自分の働き方に工夫を加える手法」です。

オランダの189人の従業員(教師、秘書、プロジェクトマネージャー、アドバイザー、ITスペシャリストなど)を対象とした調査研究の結果、仕事に関連した退屈と退屈行動は、関連はあるものの別の概念であることが示されました。仕事に関連した退屈とは、「自分の仕事は退屈だと思う」、「仕事に退屈な時間が長い」、「仕事が終わるのが遅い」、「仕事に飽きることが多い」、「仕事をしていると時間が経つのが遅く感じる」といった感情を指します。

一方、退屈行動は、「ゆっくり仕事をする」、「長い休憩をとる」、「忙しいふりをする」、「白昼夢を見ている」、「仕事とは関係のない他の活動をしている」、「時間をつぶすための活動で忙しい」といった行動を指します。

研究の結果、仕事に関連した退屈は抑うつ、不満、苦痛、および非生産的な仕事行動を引き起こし、これらの関連は、退屈な行動によって更に強化されることが分かりました。つまり、退屈と退屈行動には関係がありますが、仕事が退屈だという感情が必ずしも退屈な行動に結びつくとは限らないことを意味します。

ジョブ・クラフティングは、仕事関連の退屈と負の相関があり、仕事関連の退屈と退屈な行動との関係を減弱させることが示されました。さらに、退屈行動を介した仕事関連の退屈の結果に対する間接的な影響は、従業員がジョブ・クラフティングに従事するほど小さくなることも明らかになりました。

これらの結果から、ジョブ・クラフティングは職場における退屈の発生を減少させる可能性があり、退屈が発生した場合にはその否定的な結果を減衰させる可能性があることが示唆されます。重要なのは、従業員が仕事に関連した退屈を感じないような仕事に就く機会を提供すること、また仕事が退屈だとしてもジョブ・クラフティングができる環境を整えることです。

これらの結果は、性格特性や職務特性だけでなく、ジョブ・クラフティングのような自己調整行動も退屈感に影響を与える可能性があることを示しています。企業はこれを踏まえ、従業員が自主的に職務を工夫できる環境作りを進めることが重要です。

仕事が退屈だと健康を害する

仕事の退屈さが従業員の健康に与える影響について調査した研究があります[12]。この研究では、フィンランドの87の職場(N = 11,468、農業、製造、建設、運輸、情報通信、金融、技術、事務、公共、教育、医療・福祉、芸術・レクリエーション・娯楽、その他産業)における仕事の退屈さの相関を調査し、仕事の退屈さ、健康アウトカム、職務態度との関連を検討しました。

分析の結果、男性、36歳未満の従業員、運輸、製造、芸術・レクリエーション・娯楽に従事する従業員が仕事に退屈を感じていることが分かりました。特に、運輸、製造などブルーカラー産業に従事する従業員は、他の産業に従事する従業員よりも仕事の退屈さを経験していました。また、芸術・娯楽・レクリエーション産業で働く従業員も、比較的頻繁に職場で退屈を感じていました。

これらの調査結果は、仕事における退屈さが、仕事の単調さだけでなく、従業員にとっての仕事の意義ややりがいの欠如など、他の要素にも根ざしている可能性を示しています。さらに、仕事の退屈さは、従業員の離職や早期退職の意向、健康状態の低下、働きにくさ、ストレス症状の増加に繋がることが指摘されました。つまり、仕事の退屈さは、健康関連のネガティブな結果やストレス症状を引き起こす可能性が高いということです。

この研究では、退屈の位置づけについて感情的なウェルビーイング・モデル[13]を用いて説明をしています。全体を不安―楽しみ、心配―満足、抑うつ-熱中、覚醒の4軸で表す中で、仕事の退屈さは、熱中-抑うつの軸の抑うつ側に位置します。熱中側に位置するワーク・エンゲイジメントの対極にあり、また、燃え尽き症候群の位置する不安、不快、抑うつの側に位置するものとされています。これにより、退屈が従業員の感情的なウェルビーイングにどのように影響を与えるかが理解できます。

まとめると、仕事の退屈さは、単なる一時的な感情ではなく、健康や職務態度に深刻な影響を及ぼす重要な要素です。企業は、従業員が退屈を感じないような職務設計や職場環境の整備を行い、従業員のウェルビーイングを向上させる取り組みを強化する必要があります。

退屈がポジティブな結果をもたらす可能性

退屈は従来、職場内でも職場外でも、さまざまなネガティブな結果と関連づけられてきました。しかし最近の研究では、退屈がポジティブな結果をもたらす可能性も示唆されています[14]

1つ目の研究では、イギリスにおける80人の参加者を対象に、退屈な筆記活動とその後に行う創造的な課題の関係を調査しました。退屈な筆記活動として、電話帳から電話番号をコピーする作業を行い、その後、ポリスチレン製カップの使い道をできるだけ多く考える創造的な課題を与えました。

結果、退屈な筆記活動をした後に創造的な課題に取り組んだ参加者は、創造的な課題のみを行った場合よりも多くのアイデアを思いつき、高い平均点を得ました。しかし、退屈筆記活動後に生み出された多くの回答が必ずしも創造的とは判断されませんでした。創造性は回答の有用性と独自性の二つで評価され、退屈が量の面では創造性を向上させるが、質の面では必ずしもそうではないことが回答数と回答の質により示唆されました。

2つ目の研究では、90人の参加者を対象に、退屈な活動の種類(筆記活動と読書活動)とその後に行う創造的課題の関係を調査しました。退屈な活動として、電話番号をコピーする筆記活動または読書活動を行い、その後、ポリスチレン製カップの使い道を考える課題を行いました。次に、世界的なナルコレプシー(過度の眠気や睡眠発作を含むクロニック睡眠障害)に関する創造的な課題や刺激語と組み合わされる4つ目の単語を生成する課題も実施しました。

結果、退屈な読書ないしは筆記活動をした後の参加者は、創造的な課題に対して退屈な活動をしなかった場合よりも多くの創造的な回答を提供し、その質も高いことが回答の質の分析によりわかりました。特に、退屈な読書活動は筆記活動よりも創造性を高める状況があることが示唆されました。

このように、退屈は単なるネガティブではなく、適切に利用することで創造性を引き出す、ポジティブな結果をもたらす可能性があると考えられます。これらの研究結果は、従来の退屈に対する見方を覆し、新たな視点を提供するものです。退屈を上手に活用することで、職場や日常生活における創造性の向上に寄与することが期待されます。

退屈は、警戒、注意管理、課題遂行能力と密接に関連

最後に、退屈の様々な影響と結果の関係をよりよく理解するために、退屈影響図と呼ばれるシステムベースのフレームワークを紹介します。退屈影響図は、退屈な環境やタスク負荷の低い環境で働くことの影響や相互作用、パフォーマンスへの影響を理解する上で有用です[15]

タスクの負荷が低く、高度に自動化された環境では、最初に検出される可能性が高いのは、持続的な注意力の低下や警戒を維持する能力の低下です。典型的な警戒タスクは反復的であり、単調で退屈と感じられることが多く、警戒の低下、つまり時間の経過に伴うパフォーマンス効率の低下は、重要な信号の検出率の低下や反応時間の遅延として現れます。

鉄道運転士やトラック運転士が単調で退屈な運転に対処するために、運転中に音楽やラジオを聴いたり、同僚と話したり、食事や間食をしたり、カフェインを摂取することは知られています。しかし、これら対策を講じても注意力の低下は避けられず、疲労と退屈が並行して起こり、最終的にシステムのパフォーマンスや作業負荷に影響を与えます。

疲労がパフォーマンスに与える影響は広く認識されています。例えば、長時間のミッションを行う無人航空機の操縦士は、非常に高い疲労感を感じることが多いようです。このような感情状態、特にネガティブな状態は、人間のパフォーマンスに大きな影響を与え、無人航空機の操縦においては、認知的疲労が反応速度の低下やタスクパフォーマンスの低下を引き起こすことが示されています。

退屈をどのように対処すべきか考える

退屈に関する研究を紹介し、その原因、結果、影響について考察してきました。では、私たちは退屈を感じたときにどのように対処すれば良いのでしょうか。

退屈は一過性の感情状態であり、即時的な反応としてパフォーマンスの低下が見られます。退屈を避けるためには自己管理を強化し、刺激を求める行動をとることがありますが、それが破壊的・逸脱的行動や怒り、敵意、落ち着きのなさとして現れる場合もあります。これらはすべてネガティブな結果です。

頻繁かつ長期間にわたる退屈感は、不満や欠勤、離職に加え、身体的・精神的健康問題にまで影響を及ぼす可能性があり、深刻度が増します。そのため、退屈によるネガティブな影響を最小限に抑えることが重要です。

退屈な仕事には、ジョブ・ローテーション(計画的社内異動)やジョブ・エンリッチメント(職務拡充)、ジョブ・エンラージメント(職務拡大)を取り入れることで、仕事に刺激を与えることが有効です。定期異動や公募による担当職務替え、現在担当している仕事のよりレベルの高いことに挑戦させるジョブ・エンリッチメント、新しい仕事を任せて仕事の幅を広げるジョブ・エンラージメントなどの仕掛けが実務的には効果的です。

自己調整理論によれば、時間管理能力の高い人は注意散漫になりにくく、退屈を感じにくいとされています。例えば、仕事の処理能力を高めてマルチタスクをこなすことで、時間管理能力が向上し、退屈を感じにくくなるでしょう。タイムマネジメント、仕事の優先順位付け、スケジューリング、業務計画などの研修は時間管理の能力向上に有効です。

JD-Rモデルによれば、仕事の資源が充実し、仕事の要求が高いときには退屈感が減少することが示されています。自律性を高めたり、上司や同僚からのサポートを得ることで、仕事の要求度が高くても退屈を感じることが少なくなり、職務満足度や組織コミットメントが向上することが期待できます。

さらに、ジョブ・クラフティングが可能な環境を整えることも有効です。販売担当者が定期的な顧客訪問に加えてマーケティング活動に関わる提案をし、新しいタスクに挑戦する(タスククラフティング)ことや、プロジェクトマネージャーが異なる部門のメンバーと定期的なミーティングを設定し、意見交換やアイデアの共有を行う(リレーショナルクラフティング)こと、プロジェクトの目標を短期的な成果だけでなく長期的なキャリア目標に関連付けて考える(認知クラフティング)ことなどが挙げられます。

退屈を感じるメカニズムを理解することは重要です。個人にとっては、退屈に対して職務に工夫を凝らし、自己調整能力を高めることが、退屈にうまく対処する鍵となります。組織の管理者にとっては、仕事の資源を充実させ要求を高めること、創意工夫を促す環境を整えることが、退屈に対処する効果的な方策といえます。

脚注

[1] Fisher, C. D. (1993). Boredom at Work: A Neglected Concept. Human Relations, 46(3), 395-417.

[2] Kass, S. J., Vodanovich, S. J., & Callender, A. (2001). State-trait boredom: Relationship to absenteeism, tenure, and job satisfaction. Journal of business and psychology, 16, 317-327.

[3] 職務特性モデルとは、核心的(重要)な職務特性を有する職務に従事する人たちは、心理状態に良い変化が現れ、結果的にモチベーションが上がる。ただし、モチベーションが上がる程度には個人差があるという理論(Hackman & Oldham, 1976)。

[4] ジョブ・エンリッチメントとは、従業員のモチベーションを上げるための職務再設計に関する概念(Herzberg, 1968)。

[5] Van der Heijden, G. A., Schepers, J. J., & Nijssen, E. J. (2012). Understanding workplace boredom among white collar employees: Temporary reactions and individual differences. European Journal of Work and Organizational Psychology, 21(3), 349-375.

[6] Porath, C. L., & Bateman, T. S. (2006). Self-regulation: from goal orientation to job performance. Journal of Applied Psychology, 91(1), 185.

[7] Kanfer, R. (1990). Motivation theory and industrial and organizational psychology. Handbook of industrial and organizational psychology, 1(2), 75-130.

[8] Karoly, P. (1993). Mechanisms of self-regulation: a view. Annu Rev Psychol, 44, 23-52.

[9] Demerouti, E., Bakker, A. B., Nachreiner, F., & Schaufeli, W. B. (2001). The job demands-resources model of burnout. Journal of Applied psychology, 86(3), 499-512.

[10] Reijseger, G., Schaufeli, W. B., Peeters, M. C., Taris, T. W., Van Beek, I., & Ouweneel, E. (2013). Watching the paint dry at work: Psychometric examination of the Dutch Boredom Scale. Anxiety, Stress & Coping, 26(5), 508-525.

[11] van Hooff, M. L., & van Hooft, E. A. (2014). Boredom at work: Proximal and distal consequences of affective work-related boredom. Journal of occupational health psychology, 19(3), 348.

[12] Harju, L., Hakanen, J. J., & Schaufeli, W. B. (2014). Job boredom and its correlates in 87 Finnish organizations. Journal of occupational and environmental medicine, 56(9), 911-918.

[13] Warr, P. (1990). The measurement of well‐being and other aspects of mental health. Journal of occupational Psychology, 63(3), 193-210.

[14] Mann, S., & Cadman, R. (2014). Does being bored make us more creative?. Creativity Research Journal, 26(2), 165-173.

[15] Cummings, M. L., Gao, F., & Thornburg, K. M. (2016). Boredom in the workplace: A new look at an old problem. Human factors, 58(2), 279-300.


執筆者

樋口 知比呂 株式会社ビジネスリサーチラボ コンサルティングフェロー
博士(人間科学)×人事専門家×キャリコン。アカデミック経歴は、立命館大学大学院博士課程修了 Ph.D(人間科学)、カリフォルニア州立大学MBA、早稲田大学政治経済学部卒。UCLA HR Certificate取得。研究テーマは、ワーク・エンゲイジメント、従業員エンゲージメント、モチベーション。従業員エンゲージメントに関する研究論文で人材育成学会奨励賞受賞。職業経歴は、通信会社で人事担当者、コンサルティングファームで人事コンサルタント/シニアマネージャー、銀行で人事部長を含む役席者を経て、2021年よりFWD生命にて執行役員兼CHROを務める。人事専門家として20年超の実務経験を有する。国家資格キャリアコンサルタント。

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