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コラム

エイジズムに対処する:高齢者の健康保持と職場での活躍促進を目指して

コラム

「エイジズム」という言葉をご存知ですか。LIFULLが行った「エイジズムに関する調査」によると、若い世代の7割以上がエイジズムについて知りません[1]

エイジズムとは何でしょうか。
なぜエイジズムについて知らなければならないのでしょうか。
なぜ、社会、地域、組織において、エイジズムを解消する必要があるのでしょうか。
さらに、どのようにエイジズムに対応すれば良いのでしょうか。

本コラムは、以上の課題を解明するため、エイジズムの定義、現状、関連要因、対応策について検討します。

1.エイジズムの定義とその分類

エイジズムという概念は、1969年にアメリカの国立老人研究所の初代所長であるButlerによって提案されました。エイジズムは、アメリカ社会において人種差別や性差別と並ぶ、第3の差別とされています[2]Butlerは、エイジズムを「ある年齢層に対する、他の年齢層の偏見」と定義し、特に高齢者に対して年齢だけを理由に差別することを指しています。

Butlerは、エイジズムが個人だけでなく、社会や制度全体にも影響を与える現象だと捉えています。例えば、固定観念やデマ、明らかな軽蔑や嫌悪、そして遠ざける態度などがあります。また、住宅や雇用、さまざまなサービス分野での差別的な慣習や、高齢者を表現する際の形容詞や漫画、冗談などもエイジズムの一部だとされています[3]

一方、Palmoreは、エイジズムを「ある年齢層に対する、否定的または肯定的な偏見と差別」と定義しています。Palmoreは否定的な固定観念の例として、病気、性的不能、醜さ、精神的衰え、精神病、無能、孤立、貧困、うつ病などを挙げています。これらは、現実と比較して根拠のない誤りであると指摘しています[4] [5] [6]

実際に、アメリカの調査結果から、どの年代の人々も、高齢者が実際に抱えている問題よりも多くの問題を持っていると見なしていることがわかります。雇用(採用・昇進・解雇)、政府機関(地域保健センター、法律サービス、再就職支援、低所得者・家族向け社会サービス、雇用訓練)、家族(高齢者虐待、過労など)、住宅(高齢者専用住宅や退職者コミュニティによる年齢隔離など)、医療(高齢者に対する不十分な医療など)の5つの分野で差別があると指摘されています[7] [8] [9]

否定的なエイジズムだけでなく、高齢者向けの医療保険制度など、高齢者を支援する立場からの偏見や、「高齢者のほとんどは裕福で、貧しい高齢者はほとんどいない」という通説など、肯定的なエイジズムもあります[10] [11] [12]

本コラムでは、エイジズムを以下の2種類に分けて議論します[13] [14] [15] [16] [17] [18] [19]

(1)一般の高齢者に対するエイジズム

  • 高齢者が若い人と比べて魅力や能力が低いとされること
  • 高齢者の行動や感情が若い人よりも評価されないこと
  • 身体機能の変化により、若い世代や医療従事者、家族が高齢者に対して否定的な態度を持ったり、虐待や年齢制限による社会活動への参加制限があったりすること
  • 自分自身が高齢者であることを嫌うような否定的な態度が内面化されていること

(2)高齢労働者[20]に対するエイジズム

  • 職務記述や面接で「新しいアイデア」や「斬新な視点」など、若さを連想させる言葉が使われること
  • 昇進、解雇、研修、リーダー育成、プロジェクトの配属など、人事や経営判断においてエイジズムが表れること。例えば、デジタル関連の仕事で若年労働者だけが登用される状況など
  • 高齢労働者の価値や能力に対する否定的な態度。例えば、高齢労働者はコストがかかり、付加価値がないとされて、新しい技術やスキルの習得が難しいとされること

2.エイジズムの現状

(1)一般の高齢者に対するエイジズムの現状

2019年の米国で実施された5080歳の男女2,035人を対象にした調査では、9割以上の高齢者がエイジズムを日常的に経験していることが分かりました[21]

エイジズムの形態として最も多かったのは、健康問題や孤独感、抑うつなどの原因を年齢に求める「内面化されたエイジズム」で、81.2%でした。次に多かったのは、加齢に関する冗談や高齢者に対する否定的な見方である「エイジストのメッセージ」が65.2%、携帯電話やコンピューターの使用が困難だとされるなどの「社会的相互関係におけるエイジズム」が44.9%でした[22]

日本の調査では、「年齢による差別はあると思いますか」という質問に対し、全体の45.0%が「あると思う」と回答しました。年齢別では30代が最も高く46.8%、18-29歳(42.2%)、40代(46.7%)、50代(46.2%)、60代(43.8%)、70代以上(40.9%)という結果でした。3050代が年齢による差別に対する意識が高いことが分かりました[23]

(2)高齢労働者に対するエイジズムの現状

アメリカでは、過去35年間で55歳以上の失業者の割合が着実に増加しており[24]、高齢労働者の地位低下の問題が示唆されています。

また、高齢労働者の9割以上が、同じ年齢層に対する差別が「多少ある」または「非常によくある」と感じています[25]。職場でエイジズムを目撃または経験したことがある高年齢労働者は5人中3人に上り[26]1年以内に職を失うことを懸念している人の3分の1が、解雇の主な理由または副次的な理由としてエイジズムを挙げています[27]。しかし、エイジズムに関する正式な苦情を申し入れた労働者はわずか3%に過ぎません[28]。加えて、求職活動においては、高齢者の4%が応募や面接の過程で年齢に関する情報を求められたと回答しています[29]

高齢労働者(244名)を対象に調査を行った結果では、職場でのエイジズムが仕事や生活の満足度を脅かしていることがわかりました。男女の回答者ともにエイジズムからネガティブな影響を受けていましたが、女性の回答者はより頻繁にエイジズムを経験していると報告されました[30]

日本の若い男性労働者の場合、高齢労働者に対する固定観念は肯定的・否定的な双方の面がほぼ中立的であり、僅かに否定的な面が優勢であると指摘されています[31]

3.エイジズムに対処すべき理由

エイジズムに対処しなければならない理由について、エイジズムが高齢者の健康、社会経済の発展に悪影響を与えることが挙げられます[32]。本コラムは、「高齢者の健康に対する影響」「社会経済の発展に対する影響」という2節に分けて、それぞれの悪い影響の現状とその課題を検討します。

(1)高齢者の健康に対する影響

現状

Allen氏は、「エイジズムを笑い飛ばす人もいるかもしれませんが、それを自分の価値観として受け入れてしまうと、心身の健康に悪影響を与える可能性があります。内面化されたエイジズムの信念とステレオタイプは、最も有害です」と述べています[33]。さらに、高齢者がこうした偏見や差別を内面化すると、生活の質(QOL)にも影響を及ぼすことが懸念されています[34]

課題

日本においては、高齢者人口が増加する中で、エイジズムに対する意識の向上が求められています。特に、地域在住の高齢者を対象にした取り組みにおいては、健康とエイジズムの関連性について明確にすることが重要です。

また、高齢者に対するエイジズムは、社会的孤立や差別、偏見などの問題を引き起こすことがあります。これによって、高齢者の健康やメンタルヘルスに影響が出ることがあります。そのため、地域社会での高齢者支援や交流の促進、健康情報の提供など、エイジズムを解消するための取り組みが必要です。さらに、それぞれの取り組みの効果を評価することが重要な課題になっています。

一方、職場でも高齢労働者に対するエイジズムが問題となっています。欧米では、高齢者に対する偏見や差別がストレスや不安などの精神的負担を引き起こすことが明らかになっています[35]

これらの負担は、高齢者の離職を促すだけでなく、高齢労働者の健康やメンタルヘルスにも悪影響を与える可能性があります。そのため、日本においても、職場におけるエイジズム、ストレスや不安などの精神的負担、そして高齢労働者の健康やメンタルヘルスとの関係を慎重に解明することが重要です。

(2)社会経済の発展に対する影響

1)マクロ的側面の影響

アメリカでは労働者の高齢化が進行しており、2024年には労働力人口の25%近くが55歳以上になると言われています[36]。日本でも、2020年までに5559歳の労働人口が約660万人、6569歳の労働人口が約424万人、70歳以上の労働人口が約498万人になっています[37]

高齢労働者は急速に増加している層であり、職場で大きな役割を担っていますが、職場でエイジズムが進めば、生産性の低下や離職率の上昇を招く可能性があります。モラルが低下し、安定した労働力を維持できなくなることで、ビジネスの長期的な成功が危うくなります[38]

2)ミクロ的側面の影響①:対個人

高齢労働者は、コロナ禍以降、さらに大きな課題に直面しています。高齢者が重症化しやすいというイメージから、高齢労働者は技術的能力が低いという認識まで、高齢労働者はネガティブなステレオタイプに対抗するのに苦労しています。

こうした偏ったイメージは、雇用主が高齢労働者を新たに雇う際にも影響します。職場を離れたり、解雇されたりした高齢労働者が、再就職しようと奮闘している間、彼らの多くは課題に直面しています[39]

高齢労働者は、昇進や転職、キャリアチェンジに苦労することが多く、成果を上げていても低い地位に置かれることがあります[40]。質的分析により、エイジズムによると、仕事において、自分の能力への不安、自信喪失や無力感、孤立感や孤独感を感じ、徐々に離職していくことが明らかになっています[41]

3)ミクロ的側面の影響②:対組織

職場におけるエイジズムは、徐々に組織全体に悪影響を与え、連帯感を損ない、若年労働者と高齢労働者の貢献度を低下させることがあります。人々が軽んじられ、排除されることにもつながります。エイジズムを放置すると、職務満足度、エンゲージメント、組織コミットメントが低下することになります[42]

逆に、高齢労働者が若年労働者の指導役として、仕事の知識や経験を教えることができれば、上司は細かい管理を減らし、ビジネスの成長に時間を割くことができます。同時に、若年労働者は会社で成功するために必要なスキルを身につけることができます。しかし、職場でエイジズムがあれば、このような貴重な経験を失うことになります[43]

4.エイジズムへの対処のステージ

一般の高齢者や高齢労働者に対するエイジズムへの対処方法として、以下の共通の対応ステージが推奨されます。

  • 現状の把握
  • 関連要因の明確化
  • 対策の実施

本コラムでは、以降、各ステージの現状とその課題について説明します。

(1)現状の把握

日本では、1991年から2004年にかけて、高齢者に対するエイジズムを評価するための指標が開発され、活用されています[44] [45]。例えば、日本語版Fraboniエイジズム尺度(FSA)短縮版があります[46]。これらの信頼性と妥当性が高い評価指標を使って、高齢者に対するエイジズムの現状を把握することができます。

課題1:日本の地域在住の高齢者を対象にした実態調査の少なさ

しかし、欧米の状況に比べると、日本においては、地域における高齢者に対するエイジズムやその実感に関する調査が少ない傾向があります。そのため、エイジズムの現状を調査することは引き続き重要な課題です。

課題2:組織における大規模な定量的調査の少なさ

日本では、職場における高齢労働者に対するエイジズムに関する調査も、欧米に比べて少ない傾向があります。また、欧米の学術界や企業においても、高齢労働者に対するエイジズムの実感に基づく質的調査が主流であり、組織内のエイジズム評価指標の開発は進んでいるものの、大規模な調査はまだ十分ではありません[47] [48]

職場におけるエイジズムのメカニズムを解明するためには、引き続き検討が必要です。このような状況から、日本では適切な指標を開発し、それを学術研究や社会実装で活用することが課題と言えるでしょう。

(2)関連要因の明確化

1)地域社会におけるエイジズムの関連要因

高齢者に対するエイジズムが起こる原因として、高齢者との「接触頻度」が少なく、ネガティブなステレオタイプが強く、加齢に関する知識が不足していることがわかっています。また、若い世代では、自分の生活満足度が低いとエイジズムが発生しやすくなります[49]。一方、良好な家族関係や社会関係はエイジズムを抑制する効果があります[50]

2)職場におけるエイジズムの要因

オクラホマ大学のマイケル・クラマーによれば、人間は物事を単純化して理解しようとする傾向があります。不確実な時代ほど、ステレオタイプを形成しやすくなるとされています[51]。高齢労働者に対するステレオタイプには、例えば、次のようなものが指摘されました[52] [53]

  • 管理が難しい
  • 考え方に固執し、新しいことに適応できない
  • 技術恐怖症
  • 革新性が低い

エイジズムは、現代の高齢労働者が以前の世代よりも多様で、教育を受けているにもかかわらず、以上のような加齢や能力に関する否定的で不正確な信念によって引き起こされます[54]。さらに、COVID-19による経済不況は高齢労働者に影響を与え、失業リスクが高まることがわかっています[55]

一方、日本では、若い男性労働者を対象に、高齢労働者に対するエイジズムの要因を調査し、仕事への不満が高いと、ステレオタイプのポジティブな側面が低くなり、間接的に差別が高まることが示唆されています[56]。ただし、欧米で見られる高齢労働者に対するエイジズムの原因について、日本での調査と検討がさらに必要でしょう。

(3)対策の実施

それでは、エイジズムにどのように対処していけば良いのでしょうか。本コラムでは、政策、異世代共学の介入、マネージャーの働きかけ、という3つの観点から、想定される対策について説明しています。

1)政策とその効果

①欧米と日本の政策の現状

社会の大きな変化に伴って、政策も変化する傾向があります。例えば、工業化により労働政策やビジネス政策が変わり、放送メディアの登場によってコンテンツに関する法律や規制が見直され、インターネットは通信政策を根本的に変えてきました[57]

同様に、新しい高齢社会では、退職金、社会保障、医療政策、建築基準など、様々な政策が見直されることになります。さらに、企業は政策の見直しに積極的に参加することで利益を得られ、市場への参入を部分的に加速させることができると言われています[58]

日本には、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」があります。この法律では、高年齢者が年齢に関係なく働ける「生涯現役社会」を目指し、企業に65歳まで働ける環境を整えるよう義務づけています。

さらに、202141日からは、70歳まで働ける環境を整えることが求められています。これには、「定年制の廃止」「定年の引き上げ」「継続雇用制度の導入」といった雇用に関する措置だけでなく、「業務委託契約の導入」や「社会貢献事業に従事できる制度の導入」といった雇用以外の措置も含まれています[59] [60]

②日本の政策の効果

それぞれの政策がどれほど実践されているかは、「高年齢者雇用状況等報告」[61]を見ることで推測できます。例えば、2022年の報告では、従業員21人以上の企業235,875社からのデータが集められ、65歳まで働ける環境を整えている企業は99.9%でした。また、70歳まで働ける環境を整えている企業は27.9%でした。

この報告では、定年制を廃止している企業は3.9%であり、中小企業では4.2%、大企業では0.6%でした。定年を65歳に引き上げた企業は、全体で22.2%、中小企業では22.8%、大企業では15.3%でした。

以上の結果を考慮すると、日本の政策は高齢者の雇用機会を守るために一定の効果があることがわかります。他方で、定年制の廃止やそれに関連する支援を今後も検討する必要があります。

2)異世代共学による介入

①異世代共学の介入の提唱

高齢者や高齢労働者に対するエイジズムを解消するために、若い世代と中高年世代が互いに学び合う「異世代共学」の重要性が主張されています[62] [63]。日本における実証研究においては、高齢者との交流の質を高めることが差別の低減に寄与することが示唆されています[64]。よって、異世代共学を活用し、交流の質を高める居場所を提供することを、本コラムでは提言します。

②異世代共学の事例

AARP(旧称:アメリカ退職者協会、American Association of Retired Persons)は、全米最大の非営利・超党派組織であり、人々が年を取っても自分らしい生き方を選択できるようにすることを目的に活動しています。約3800万人の会員を擁し、各州、コロンビア特別区、プエルトリコ、米領ヴァージン諸島にオフィスを構えています。

AARPは、健康保障の分野では、メディケアの保護、医療へのアクセスの拡大、処方箋薬の価格引き下げ、介護者の支援、介護施設の居住者の保護に取り組んでおり、経済的安定性の分野では、社会保障制度の保護、労働者のための貯蓄制度の確立、詐欺や不正行為の防止に取り組んでいます。さらに、職場における年齢差別の撤廃や手頃な価格の住宅、食料安全保障など、弱者や不当な扱いを受けている人々の問題についても発言しています[65] [66] [67]

AARPの調査によって、2021年に仕事を失う可能性があると心配している高齢労働者の61%が、その原因は自分の年齢だと考えています。高齢者は仕事探しの準備が整っていると感じていますが、44%の人は5年以上面接を受けておらず、74%の人が新しい仕事に就くためには新しいスキルを学ぶ必要があると回答しています[68]

地域、職場のエイジズムを解消するため、AARPは異世代共学の体験活動を実施しています。その活動の具体的なねらいは、異世代共学の体験活動を通じて、ミレニアル世代は「老いとは衰えることではなく、成長することだ」という考え方を得て、自分たちがいつか老いるという現実を受け入れ、自分たちの将来について考えることができるようにすることです。また、この考え方は、老化に対するネガティブなイメージを払拭し、エイジズムの温床を防ぎ、年齢を超えた共感や理解を促進します[69]

さらに、実際に老いた人たちを紹介することで、彼らが年齢に関わらず、自分自身を成長させ、新しいことを学び、新しい経験をすることができることを示しています[70]。以下のビデオは、その活動の実態が反映されています[71]。エイジズムが抑制できる異世代共学の事例について興味のある方は、以下のビデオをご覧ください。
What Age Do Millennials Think Is ‘Old’? – Video (aarp.org)

③異世代共学モデルの課題

日本を含む世界の様々な国や地域で、異世代共学モデル(Intergenerational education and service programming)を踏まえ、健康管理や家族との絆強化、ICT技能の養成など、異世代間の共同学習を企画しています[72] [73] [74]

しかし、エイジズムを解決するために、異世代共学に適した講義内容を開発する経験が少ないため、課題となっています。例えば、職場におけるエイジズムを解決することに伴い、従業員の業務スキルを向上させるために、従業員向けの社内研修プログラムの開発が重要でしょう。

3)マネージャーの働きかけ

高齢労働者に対するエイジズムを解決するためには、マネージャーの役割も重要です。欧米では、マネージャーに対して次の対策が提案されています[75] [76]

  • 若い世代と高齢世代が無理に一緒に働くことを強制しない
  • エイジズムについて学ぶ
  • マネージャーがエイジズムに対抗する
  • エイジズムがないように、従業員をサポートする
  • 各世代の経験や特徴を活用する
  • 世代以外の要素にも関心を持つ

すなわち、マネージャーの働きかけを踏まえて、職場でのエイジズムを解消し、高齢労働者が活躍できる環境を整えることが重要です。

さらに、企業はエイジズムをなくすための方針を明確にし、労働者に対する意識改革を促すことが求められます。また、高齢労働者のスキルや経験を活かすための職場環境を整え、若年労働者との協力や連携を促すことが必要です。これにより、高齢労働者が安心して働ける職場が実現し、ビジネスの成長と社会全体の発展につながります。

それぞれの提案について、職場における抑制効果を調査した上で、適切な支援を行い、その効果を評価することが今後の課題です。

おわりに

本コラムでは、エイジズムについて説明し、現状と解決策を提案しました。エイジズムに関心を持つ人が増え、対策が活性化し、高齢者の健康や職場での活躍が促進されることを願っています。

 

脚注・引用文献

[1] LIFULL. (2021129). 202111月の不動産市況レポート. https://lifull.com/news/21802/

[2] Butler, R. N. (1969). Age-ism: Another Form of Bigotry. The Gerontologist, 9, 243.

[3] Butler, R. N. (2006). Ageism. In R. Schulz (Ed.), The Encyclopedia of Aging (4th ed., p. 41). Springer.

[4] Palmore, E. B. (1999). Ageism: Negative and Positive (2nd ed.). Springer.

[5] パルモア, アードマン・B., 奥山正司, [ほか] (). (1995). エイジズム: 優遇と偏見・差別(りぶらりあ選書). 法政大学出版局.

[6] 関根, 薫. (2019). 高齢期の幸福な老いとエイジズム. 晃洋書房.

[7] Palmore, E. B., Ageism: Negative and Positive 2nd ed., Springer, 1999

[8] パルモア, アードマン・B., 奥山正司, [ほか] (). (1995). エイジズム: 優遇と偏見・差別(りぶらりあ選書). 法政大学出版局.

[9] 関根, . (2019). 高齢期の幸福な老いとエイジズム. 晃洋書房.

[10] Butler, R. N. (2006). Ageism. In R. Schulz (Ed.), The Encyclopedia of Aging (4th ed., p. 41). Springer.

[11] Palmore, E. B. (1999). Ageism: Negative and Positive (2nd ed.). Springer.

[12]関根, . (2019). 高齢期の幸福な老いとエイジズム. 晃洋書房.

[13] Kite, M. E., Stockdale, G. D., Whitley, B. E. Jr., & Johnson B. T. (2005). Attitudes toward younger and older adults: an updated meta-analytic review. Journal of Social Issues, 61, 241-266.

[14] Wyman, M. F., Shiovitz-Ezra, S., Bengel, J. (2018). Ageism in the health care system: providers. patients and systems. In L. Ayalon, & C. Tesch-Romer (Eds.), Contemporary perspectives on ageism (pp. 193-212). Cham, Switzerland: Springer International Company.

[15] 杉澤,秀博 [ほか]. (2021). 老年学を学ぶ: 高齢社会の学際的研究.(桜美林大学叢書, vol. 007. 桜美林大学出版会, 論創社 (発売).

[16] Smith, N.D. (2022). I was a manager in an ageist workplace. [飯野由美子訳, Diamondハーバード・ビジネス・レビュー, 20229月号]. Kindle.

[17]Golden, S.W. (2022). Work in the era of no retirement. Harvard Business Review. [飯野由美子訳, Diamondハーバード・ビジネス・レビュー, 20229月号]. Kindle.

[18] パルモア, アードマン・B., 奥山正司, [ほか] (). (1995). エイジズム: 優遇と偏見・差別(りぶらりあ選書). 法政大学出版局.

[19] 竹内真純, & 片桐恵子. (2020). エイジズム研究の動向とエイジング研究との関連: エイジズムからサクセスフル・エイジングへ. 心理学評論, 63(4), 355-374.

[20] 本コラムにおける「高齢労働者」は、45歳以上の従業者を指す(根拠:https://mp.weixin.qq.com/s/XngcOoyyK2gzfA22Vv_h_Q

[21] Allen, J. O., Solway, E., Kirch, M., Singer, D., Kullgren, J. T., Moise, V., & Malani, P. N. (2022). Experiences of everyday ageism and the health of older US adults. JAMA Network Open, 5(6), e2217240-e2217240.

[22] 同上

[23] LIFULL. (2021129). 202111月の不動産市況レポート. https://lifull.com/news/21802/

[24] Barrington, L. (2015). Ageism and bias in the American workplace. Generations, 39(3), 34-37.

[25] Golden, S. W. (2022). Stage (Not Age): How to Understand and Serve People Over 60-the Fastest Growing, Most Dynamic Market in the World. Harvard Business Review Press.

[26] 同上

[27] 同上

[28] 同上

[29] 同上

[30] Tahmaseb-McConatha, J., Kumar, V. K., Magnarelli, J., & Hanna, G. (2023). The Gendered Face of Ageism in the Workplace. Advances in Social Sciences Research Journal, 10(1), 528.

[31] Sugisawa, H. (2022). Psychosocial predictors of young male workers’ discrimination against older workers in Japan: comparison of four models. Ageing & Society, 1-26.

[32] WHO日本事務所. (2021326). 日本WHO協会. (2021). エイジズム(年齢差別)に関するグローバルレポート. https://japan-who.or.jp/news-report/2103-26

[33] Allen, J. O., Solway, E., Kirch, M., Singer, D., Kullgren, J. T., Moise, V., & Malani, P. N. (2022). Experiences of everyday ageism and the health of older US adults. JAMA Network Open, 5(6), e2217240-e2217240.

[34] 同上

[35] Tahmaseb-McConatha, J., Kumar, V. K., Magnarelli, J., & Hanna, G. (2023). The Gendered Face of Ageism in the Workplace. Advances in Social Sciences Research Journal,

[36] Ageism in the Workplace – How Age Discrimination Affects Businesses (vantageaging.org)

[37] 内閣府令和3年版高齢社会白書(2021).

[38] Ageism in the Workplace – How Age Discrimination Affects Businesses (vantageaging.org)

[39] Morrow-Howell, N., Galucia, N., & Swinford, E. (2020). Recovering from the COVID-19 pandemic: A focus on older adults. Journal of Aging & Social Policy, 32(4-5), 526-535.

[40] Susan Wilner Golden, Work in the Era of No Retirement,” HBR.org. March 082022. Reprint HO6WHG.飯野由美子(),集団の結束力を強め、イノベーションをもたらすシニア人材が企業を支える時代DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー229月号 [雑誌] Kindle.

[41] Tahmaseb-McConatha, J., Kumar, V. K., Magnarelli, J., & Hanna, G. (2023). The Gendered Face of Ageism in the Workplace. Advances in Social Sciences Research Journal, 10(1), 528.

[42] Golden, S.W. (2022). Work in the era of no retirement. Harvard Business Review. [飯野由美子訳, Diamondハーバード・ビジネス・レビュー, 20229月号]. Kindle.

[43] Ageism in the Workplace – How Age Discrimination Affects Businesses (vantageaging.org)

[44] 杉澤,秀博 [ほか]. (2021). 老年学を学ぶ: 高齢社会の学際的研究.(桜美林大学叢書, vol. 007. 桜美林大学出版会, 論創社 (発売).

[45] 関根,薫. (2019). 高齢期の幸福な老いとエイジズム. 晃洋書房

[46] 原田謙, 杉澤秀博, 山田嘉子, 杉原陽子, & 柴田博. (2004). 日本語版Fraboni エイジズム尺度(FSA)短縮版の作成──都市部の若年男性におけるエイジ ズムの測定. 老年社会科学, 26(3), 308-319.

[47] Golden, S. W. (2022). Stage (Not Age): How to Understand and Serve People Over 60-the Fastest Growing, Most Dynamic Market in the World. Harvard Business Review Press.

[48] Marchiondo, L. A., Gonzales, E., & Ran, S. (2016). Development and validation of the workplace age discrimination scale. Journal of Business and Psychology, 31, 493-513.

[49]WHO日本事務所. (2021326). 日本WHO協会. (2021). エイジズム(年齢差別)に関するグローバルレポート. https://japan-who.or.jp/news-report/2103-26

[50] 関根,薫. (2019). 高齢期の幸福な老いとエイジズム. 晃洋書房

[51] DePaul, K., & Sawhney, V. (2022, March 8). Is generational prejudice seeping into your workplace? Harvard Business Review. https://hbr.org/2022/03/is-generational-prejudice-seeping-into-your-workplace

[52] Zippia. (2021928). Age Discrimination Statistics: How Common Is It In 2021? https://www.zippia.com/research/age-discrimination-statistics/

[53]Golden, S.W. (2022). Work in the era of no retirement. Harvard Business Review. [飯野由美子訳, Diamondハーバード・ビジネス・レビュー, 20229月号]. Kindle.

[54] Zippia. (2021928). Age Discrimination Statistics: How Common Is It In 2021? https://www.zippia.com/research/age-discrimination-statistics/

[55] Gitnux. (20201216). Ageism in the Workplace Statistics: The Ultimate Guide for 2020. https://blog.gitnux.com/ageism-in-the-workplace-statistics/

[56] Sugisawa, H. (2022). Psychosocial predictors of young male workers’ discrimination against older workers in Japan: comparison of four models. Ageing & Society, 1-26.

[57] Golden, S. W. (2022). Stage (Not Age): How to Understand and Serve People Over 60-the Fastest Growing, Most Dynamic Market in the World. Harvard Business Review Press.

[58] Golden, S. W. (2022). Stage (Not Age): How to Understand and Serve People Over 60-the Fastest Growing, Most Dynamic Market in the World. Harvard Business Review Press.

[59] 法務省. (2019529)高年齢者等の雇用の安定等に関する法律 | e-Gov法令検索

[60] 厚生労働省. (2022). 高年齢者雇用状況等報告. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_29133.html

[61] 同上

[62] WHO日本事務所. (2021年3月26日). 日本WHO協会. (2021). エイジズム(年齢差別)に関するグローバルレポート. https://japan-who.or.jp/news-report/2103-26

[63] Gallo. A. (2022). Is That Conflict with Your Colleague Really About Age Difference. [高橋由香理訳, DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー, 2022年9月号, Kindle版]

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[69] AARP. (20161018). What Is Old? https://www.aarp.org/disrupt-aging/stories/ideas/info-2016/what-is-old-video.html

[70] 同上

[71] 同上

[72] Ames, B. D., & Youatt, J. P. (1994). Intergenerational education and service programming: A model for selection and evaluation of activities. Educational Gerontology: An International Quarterly, 20(8), 755-764.

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[75] Golden, S. W. (2022). Work in the era of no retirement. Harvard Business Review. [飯野由美子訳, DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー, 20229月号, Kindle]

[76] Smith, N. D. (2022). I Was a Manager in an Ageist Workplace. [飯野由美子訳, DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー, 20229月号, Kindle]


執筆者

孫 潔
株式会社ビジネスリサーチラボ フェロー。中国東北大学東軟情報学院日本語専攻卒業、中国佳木斯(チャムス)大学大学院日本語言語文化専攻博士前期課程修了、桜美林大学大学院老年学研究科老年学専攻(現・桜美林大学大学院国際学術研究科老年学学位プログラム)博士課程(前期・後期)修了。修士(文学・老年学)、博士(老年学)。専門社会調査士。ジェロントロジーマイスター認定。老年医学と老年心理学の領域では、中高年者における健康寿命の影響要因、認知症の患者におけるコミュニケーション障害評価に関する研究、老年社会学と教育老年学の領域では、高齢者における学習のニーズとその実践の関連要因、それぞれの活動参加の効果評価に関する研究に取り組んでいる。

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