2022年8月1日
フェロー対談:小田切岳士 ~臨床心理学をバックボーンに、介入に関心を寄せる~
株式会社ビジネスリサーチラボでは、多様なバックグラウンドを持つフェローが働いています。フェローのこれまでのキャリア、現在の活動や関心、今後の展望などを共有することを目的にした対談を実施しました。
今回は、フェローの小田切岳士です。小田切は現時点で入社3年目を迎え、これまでビジネスリサーチラボにおいて様々な仕事に取り組んできました。以下、小田切と当社代表取締役の伊達洋駆による対談をお届けします。
伊達:
初めに、自己紹介をお願いします。
小田切:
フェローの小田切岳士と申します。ビジネスリサーチラボには中途採用で、2020年に非常勤フェローとして入社しました。2022年4月から常勤フェローになり、合わせて3年目になります。
普段の業務としては、学術研究や民間調査のレビューを行っています。また、「クライアント企業に、このような課題意識があるが、学術界・社会的にはどう言われているのか」などの形で、広く俯瞰するようなレビューも行っています。
他にも、クライアント企業で実施した調査のデータ分析や、人事とマネジメントに役立つコラムの執筆もしています。
志望動機:関心があり、自分にもできることがあると感じたから
伊達:
最初の質問です。小田切さんは、ビジネスリサーチラボがJREC-INに掲載していた情報を見て、応募してくれました。応募に至るまでのプロセスを教えてください。
小田切:
高校時代、将来の仕事として、カウンセラーになりたいと考えていました。そして、大学では心理学、大学院では臨床心理学を専攻しました。その後、企業の従業員の方々にメンタルヘルスサービスを提供する会社に就職しました。
その会社では、個人に対してカウンセリングを行うだけでなく、改正労働安全衛生法にて義務化された「ストレスチェック制度」に関して、実施運用の支援や、個人結果を集計し、会社全体や部署単位で報告するといった事業を行う部署にも配属されました。
そこでの業務として、たとえば個人結果を集計・分析し、結果をクライアント企業に提供するところまでは、ある程度スムーズにできました。もともと学生時代に学んできた心理学の知見や、心理統計の技術が活かせたからです。
ただ、数値結果をそのまま報告することはできたとしても、クライアント企業の人事の方、現場の管理職の方が、具体的にどうアクションを取ればいいか。あるいは、そこに関心やモチベーションを持って取り組めるような情報の伝え方が、なかなか見えてきませんでした。
そもそも、メンタルヘルスの専門的な概念や、カウンセラー的な視点からのメッセージが、一般のビジネスやマネジメントをされている方々に響かない印象を受けたのです。「言語が違った」と言えるかもしれません。
相手に伝わるコミュニケーションを身につけたり、提案の「引き出し」を増やしたりしたいと悩んだ末、一度、転職しました。そこでは営業として働いていましたが、あまりうまくいきませんでした。結果として退職し、かなり自己効力感や自己肯定感が低い状態になってしまいました。
それが20代後半ぐらいなのですが、そこからのキャリアを考えていくときに、「こうなりたい」という理想論よりも、「まず、自分が素直に関心のあるもの、かつ自分がしっかりできそうな仕事をしたい」と考えるようになりました。
「自分には何ができるのだろうか」と内省する中で、大学院で学んだ経験や、それまでの業務経験から、学術研究に対する関心を持っていたり、論文を読むことなどは抵抗がなかったりすると改めて気づきました。
そこで、基本的には学問領域の公募が出ているJREC-INで、大学ではなくあえて民間企業で絞ったところ、ビジネスリサーチラボがヒットし、業務内容も自分にできそうと感じて、応募するに至りました。
伊達:
今のお話で興味深いのは、小田切さんの関心が「臨床的である」点です。たとえば、個人にカウンセリングを行った結果、相談者が何もアクションを起こそうとしない場合、臨床としてはうまくいかなかったと位置づけられるかもしれません。
臨床的な関心があったからこそ、十分に動かないクライアント企業という状況に直面したときに、「果たしてこのままでいいのか」という問題意識を持ったのではないでしょうか。人や組織をよりよい方向に向けて動かしていくために、どうすればいいか。これが小田切さんの問題意識だと感じました。
実際、ビジネスリサーチラボへの応募者の中には毎年、臨床心理学を専攻する方が一定の割合でいらっしゃいます。臨床的な関心を持つ方は、ビジネスリサーチラボと親和性が高いのかもしれません。
印象的なレビュー:ダークサイド研究
伊達:
ビジネスリサーチラボの主要な業務の一つに、「研究レビュー」があります。先行研究を読み、解釈し、整理する。小田切さんがビジネスリサーチラボで働いている、この3年間で考えると、場合によっては、一般的な研究者より、多くの、幅広い分野の論文を読んでいる可能性もあります。
そうした研究レビューに取り組んできた中で、小田切さんが印象に残っているものはありますか。
小田切:
自分でも重要だと思っているのが、「ダークサイド(dark-side)」研究のレビューです。ダークサイドとは、「一般的にはあった方が良い、高い方が良いとされている概念がもたらす、副作用や悪影響」を指します。
たとえば、ワークエンゲージメントが高すぎると、ワーク・ライフ・バランスに悪影響があります。ワークエンゲージメントが高いと、仕事に没頭し、時間を忘れて働いてしまう可能性があるからです。結果として、残業時間が長くなり、家庭との間で調整がうまくできなくなります。
ダークサイド研究が印象に残っている理由は2つあります。1つは、私の性格として、世の中で何か新しいものが流行っているとき、「それって本当にいいものなの?」と考えてしまうところがあります。副作用が実証されていることに感動すら覚えました。
もう1つは、「この概念には、こういう良い部分もあるけれど、この部分には気をつけたほうがいいですよ」などと、その概念や現象を冷静に捉えることが、誠実な態度だと考えているからです。
ワークエンゲージメントについても、「ワーク・ライフ・バランスに悪影響があるから、高めないほうがいい」ということではなく、「基本的には高めていきましょう。ただし、ワーク・ライフ・バランスには注意しなければなりません」と伝えることができます。
伊達:
ある働きかけは良い影響をもたらすばかりではなく、リスクもはらんでいるということですね。他の領域と比較すると、小田切さんの知的バックボーンである臨床心理学では、リスクに関する議論がなされる素地があると思うのですが、どうでしょうか。
小田切:
たしかに、介入に際して慎重になるところはありますね。たとえば、個人を対象にしたカウンセリング、カウンセラーと相談者の一対一関係だと、生々しい影響も出てきます。
様々な可能性や危険性も考慮しつつ、基本方針はこうしましょうと、自分で考えたり、ベテランのカウンセラーにアドバイスしてもらったり、複数の専門家とディスカッションしながら方針を決めていきます。
また、臨床心理学のリスクに対する考え方は、医療に近いものがあります。具体的には、この症状の方に、この心理療法は禁忌です、使ってはいけません、などと決まっています。「臨床」という言葉のルーツは医療にあり、リスクに関する議論がなされやすいのかもしれません。
伊達:
ある働きかけを「絶対的に正しい」と考えることは、臨床倫理に反しますよね。働きかけには良い影響と、そうではない影響の両方が起こりえる。それらをしっかり見つめ、判断していく必要があります。
臨床心理学をルーツに持つ小田切さんがダークサイド研究に関心を持つのは、性格の側面だけではなく、職業倫理としても触れるものがあったのではと思いました。
研究のためのレビュー/ビジネスリサーチラボでのレビューの違い:誰のための・何のためのレビューか
伊達:
小田切さんは学会で発表したり、研究論文を書いたりした経験もありますが、そこでもレビューを行いますよね。学術研究のためのレビューと、ビジネスリサーチラボで行うレビューには、どのような違いがありますか。
小田切:
ビジネスリサーチラボにおいて、レビューを行う際にはクライアント企業に届けるところまで考える必要があります。その方々に向けて分かりやすく、意味のある内容にしなければなりません。ここが大きな違いではないでしょうか。
伊達:
ビジネスリサーチラボのレビューは、相手の理解を深める手伝いをしたり、新たな視点を提供したり、何らかの方向に動くことを支援したりするためのレビューですね。
小田切:
私がビジネスリサーチラボの業務としてレビューを行うときは、まず、その著者が言っていること、重要な部分をそのまま抜き出して書きます。その上で、それを自分なりにまとめる。この二段階のステップを踏んでいます。
考えてみると、これも個人臨床と似通った方法です。相談者の言動を、まずは解釈なしに観察し、記録する。そして、その言動が何を表しているのかを解釈します。もしかすると、そこも通じているのかもしれません。
伊達:
事実と解釈を分けましょうというのは、よく言われることですが、相手に何らかの影響を与える上でも、レビューにおいて著者が言っていることと、自分がそれをどう読み解くかを区別するのが有効なのですね。
小田切:
付け加えると、受け取った相手が解釈する余地を残すことも必要だと思っています。私の解釈について、受け手が疑問を抱いた際も、一次ソースにさかのぼって、自分なりの解釈を検討することができます。
これは、臨床的、かつ個人的な倫理観から生まれた考え方かもしれません。カウンセリングでも、直接的な介入をする際には、慎重になるべきという観点があります。ある意味、カウンセラーは「黒衣」である必要があります。実際に動くのは相談者自身だからです。
カウンセラーから、具体的に「これをやってください」と言われたわけではないが、なんとなくうまくいくようになってきた、ちょっと考え方が変わった。そうなれるように、明らかにやるべき事がある際は伝えますが、あまり言い過ぎないことも大事です。
伊達:
「相手に考えてもらうためのレビュー」でもあるのですね。
小田切:
そうですね。ある場面で覚えた「正解」は、少し状況が変わっただけで、すぐ使えなくなることもあるでしょう。自分で考え、導き出したやり方だからこそ、柔軟性を持って活かしていけると思っています。
印象的なデータ分析:テレワーカー・オフィスワーカーの「好み」の分析
伊達:
ビジネスリサーチラボのもう一つの主要業務である「データ分析」について、印象に残っているものを教えてください。
小田切:
2021年にビジネスリサーチラボが実施した、テレワーカーとオフィスワーカーの実態調査です。その中で、私が関心のあった「セグメンテーション・プリファレンス」を測定し、他の要素との関連性を分析しました。セグメンテーション・プリファレンスとは、ワークとライフを分離したいかという、個人の好みを指すものです。
結果として、ワークとライフを分離したいか統合したいか、あるいは、テレワーカーかオフィスワーカーによって、ワーク・ファミリー・コンフリクトを低減する要素が異なることがわかりました。
結果自体も興味深いのですが、セグメンテーション・プリファレンスを用いた研究は、海外では一定の蓄積があるものの、日本国内ではほとんどありませんでした。国内で行われた、かつ、近年のテレワーク状況も加味しており、価値があると感じました。
伊達:
全社的に一律で実施される人事施策は少なくありません。ただ、従業員の考え方や価値観、好みは異なっています。個人差に注目し、それぞれにフィットした施策を行ったほうが、介入の効果は高まりますよね。
とはいえ、100人の価値観や好みに合わせた100の施策は打ちにくい。ある程度のグループに分けられる個人差に注目すると、介入がしやすくなります。セグメンテーション・プリファレンスは、ワーク・ライフ・バランス関連の施策を打っていく上で、考慮すると良い要素の一つですね。
小田切:
「好み」というと、少し稚拙なものに思えるかも知れません。ただ、数年前から、HR領域で「エンプロイージャーニー」という言葉が流行り始めています。従業員一人ひとりが、入社前から入社後、そして退職に至るまで、それぞれの仕事の旅、キャリアの旅を歩んでいることを指す言葉です。「こういう仕事をしたい」「こういうキャリアを歩みたい」というのは、まさに個人の好みですよね。
また、個人差について考えることは、ダイバーシティの観点からも重要です。これまで当たり前だと思っていた制度が、実は、一定の属性や価値観を持つ人たちの声を無視していたのかもしれない。そのような問題意識が生まれることが、社内のダイバーシティを考える上での第一歩となるでしょう。
個人差に注目し、たとえば、自分の価値観や好みにあった制度を、自分で選んで利用できるような環境づくりは、今後ますます求められると思います。
伊達:
興味深いことに、この話も介入を前提とした考え方ですよね。介入を前提としたら、目の前の個人や組織の独自性、個別具体性は無視できません。
人や組織をめぐる領域でも今後、「パーソナライゼーション」がキーワードになっていくでしょう。そのとき、個人差の切り口を、どう見いだしていくかがポイントになると思います。現在は、性別・年齢・勤続年数などのデモグラフィックな属性で考えられがちです。それらとは違う切り口で個人差を捉える観点が増えていけば、パーソナライゼーションの可能性が広がります。
印象的な学び:関心の高低にとらわれない、幅広い知見
伊達:
ビジネスリサーチラボで働く中で、小田切さんが得た学びとして印象的なものを教えてください。
小田切:
大きく2つあります。1つ目は、具体的な打ち手につながるような、経営学や組織行動論における、様々な概念や研究知見を知れたことです。
なぜそれが印象的か。たとえば、組織サーベイの中で、「経営層との信頼関係」がワークエンゲージメントに関連しているという分析結果が出てきたとします。
経営層と信頼関係を高めれば、ワークエンゲージメントが高まることは分かったとしても、どうやってそれを高めるか、そもそも、経営層との信頼関係とはいったい何か。以前は質問項目を辿ることしかできませんでしたが、ビジネスリサーチラボで働くようになってからは、たとえば「組織的公正」という概念が浮かんできます。
その結果、従業員が意思決定に参加する機会がある、あるいは、経営層の意思決定の手続きを見える化するといった、打ち手の引き出しが増えましたね。これは、貴重な財産となっています。
伊達:
ビジネスリサーチラボで行う組織サーベイやデータ分析において、知識は重要です。重要なポイントに気付けるか否かの差にもなります。しかも、必要とされる知識は非常に幅広い。小田切さんにとっては、介入の精度を高めるような知識を得られたことが印象的だったのですね。
小田切:
2つ目ですが、自分が関心のある領域もあれば、そうではない領域もあります。とはいえ、ビジネスリサーチラボの仕事の中では必ずしも関心が高くない領域も、レビューのテーマとして扱う必要がある。その状況が、自分の知識の幅を広げる意味で良かったのではないかと思います。
伊達:
共感します。自分が好きな領域は自然と探索しますが、裏を返せば、あまり触れない領域も出てきます。後者について仕事で触れる機会があると、世界が広がりますね。また、自分の元々持っている知識を再構築するためのヒントを得られることもあります。
当社で働き続ける理由:関心の近い人が集まる場、ポジティブフィードバック
伊達:
小田切さんは入社3年目に入り、ここまで退職せずに来ている上に、むしろコミットメントのレベルは右肩上がりであると認識しています。ビジネスリサーチラボで働き続けている理由を教えてください。
小田切:
主な理由は2つあります。1つ目は、私が組織にとても関心があり、それを仕事にできているからです。
たとえば、業務時間外でも、ニュースなどで「○○社がこのような人事制度を導入しました」などと見かけたとします。すると、「どんな制度だろう」「経営学のこの理論に照らし合わせると、従業員の人たちにどう影響するだろう」と考えます。
そういった個人的な関心を、社内コミュニケーションツールに投稿すれば、伊達さんや他のフェローの方々から反応をもらえる。自分の関心に反応してくれたり、自分に近い関心を持っている方々と働けたりすることは、純粋に嬉しいことです。
2つ目は、業務に関するフィードバックが、基本的にポジティブなことです。もちろん、私の業務はいつも完璧ではありませんし、それを自覚もしています。
ただそこで、ポジティブフィードバックをいただけると、自信がつきます。そして自信がつくからこそ、より良くするためにはどうするか、また、新しいことに挑戦しようという前向きさにもつながることを実感しています。
伊達:
ポジティブフィードバックは、会社として意識していることです。私は、ビジネスリサーチラボにおけるポジティブフィードバックの有効性を、2つの点から確信しています。
1つ目は、ビジネスリサーチラボの仕事が、複雑性や難易度が高いものであることに関連します。新しいことを学び続けなければなりませんし、クライアントからは社内で解けなかった課題が持ち込まれてくるため、課題の難易度も高い。
複雑で難しい課題に立ち向かうと、うまくいくことばかりではありません。その中でも、落ち着きを保ちつつ、継続的にチャレンジするために、自信は根源的に重要です。
自信を保ったり高めたりする際に、「ダメ出し」ではいけません。複雑で難しい課題に取り組むプロセスにおいては、本来、ダメ出しは無限にできてしまいます。ところが、できていないことを見ているばかりでは、前に進めなくなります。そこで、ポジティブフィードバックによって自信を高めることが有効なのです。
2つ目は、ビジネスリサーチラボに入社する人が、多様性に富んでいることが関係します。それぞれの人が、特殊な経験を積んできています。他の人から見ると、「この人はここが足りていない」と感じる部分はあるでしょう。しかし、改善すべきところばかり見ていても、活躍はできません。
むしろ、その人が持っている強みを見つけ、さらに伸ばしていけるような仕事をアサインすることが重要だと思っています。
さらに言えば、弱みは強みにもなりえます。たとえば、小田切さんは仕事が本当に速いのですが、それと比べてゆっくり仕事をしている人がいたとします。ただ、この人は仕事が遅いのではなく、丁寧にしていると捉え直すと、景色が違ってきますよね。
私は、ビジネスリサーチラボを、それぞれの強みを積極的に探り合い、それをポジティブに認め合うような会社にしていきたいと考えています。
当社にフィットする人:3つの関心がある方が合うのでは
伊達:
ビジネスリサーチラボで働く上でフィットする人のイメージはありますか。
小田切:
3つほどあります。1つ目は、研究知見やスキルなどを、企業で実際に起きている問題の解決に用いたい気持ちがある方です。
2つ目は、経営学や心理学、組織全般に関心のある方。仕事の場面でなくとも、ニュースなどの情報に何となく目が留まってしまう。それくらい関心が高い方であれば、より働きやすいと思います。
3つ目は、組織の内外を問わず、相手がいることを意識できる方。ビジネスリサーチラボという組織の中で働く、または組織として動いていく上では、まず社内のメンバー間での信頼関係や、尊重し合える関係を作っていく必要があります。
そうした関係性が、結果的に、クライアント企業などの相手に提供するサービスの質を高める。それを意識しながら働けると、うまくいくと思います。
伊達:
興味深いのは、小田切さんが能力の話をしていないことです。もちろん最低限の能力は必要ですし、ビジネスリサーチラボの選考にはそれなりのハードルがあります。しかし、高い関心があれば、学習に対して苦痛を感じずに歩みを進めていけます。自然と能力もついてくるでしょう。
小田切:
そうですね。これは経験則ですが、人や組織が動くときに、必要な要素が3つあると思っています。1つ目は「機会」、2つ目は「能力・知識」、3つ目は「モチベーション」です。
これまで様々なクライアント企業の方とお話しする中で、モチベーションが、最も重要、かつ高めにくいものでもあると感じています。だからこそ、ビジネスリサーチラボでも、最初の入社段階で、そこだけはフィットさせておくことが重要と感じます。
伊達:
確かに、機会は作ることができるし、能力や知識も身につけることはできる。他方で、「関心を持て」「動機を形成せよ」とは指示できないですもんね。
今後取り組みたいこと:現場への還元、個々人へのサーベイフィードバック
伊達:
最後の質問です。ここまで過去から現在について聞いてきましたが、今後、ラボでどのような仕事に取り組みたいか教えてください。
小田切:
2点ほどあります。1点目は、自分の知識を一層、現場に還元していきたいと思っています。日々の業務に励みながら知識を蓄え、クライアント企業の担当者の方々とやりとりをしたり、セミナーでの登壇をしたりする機会を増やしていきたいです。
2点目は理想論ですが、組織サーベイを現場のために役立てる観点から、会社全体や部署の結果だけでなく、個々人の結果を提供できるサーベイを設計できればと思います。
個々人に対して、結果をフィードバックできる。かつ、結果の読み方や解釈の仕方をレクチャーする機会も設ける。そのようなことができると理想的です。
伊達:
知的な体力をつけながら、より前線の仕事を増やしていきましょう。また、個人へのフィードバックというのは、小田切さんならではの視点ですね。ビジネスリサーチラボの今後の挑戦としても、有意義な課題だと感じました。
インタビューは以上となります。ありがとうございました。
小田切:
ありがとうございました。
プロフィール
同志社大学心理学部卒業、京都文教大学大学院臨床心理学研究科博士課程(前期)修了。修士(臨床心理学)。公認心理師、臨床心理士。働く個人を対象にカウンセラーとしてのキャリアをスタートした後、現在は主な対象を企業や組織とし、臨床心理学や産業・組織心理学の知見をベースに経営学の観点を加えた「個人が健康に働き組織が活性化する」ための実践を行っている。特に、改正労働安全衛生法による「ストレスチェック」の集団分析結果に基づく職場環境改善コンサルティングや、職場活性化ワークショップの企画・ファシリテーションなどを多数実施している。
伊達 洋駆
神戸大学大学院経営学研究科 博士前期課程修了。修士(経営学)。2009年にLLPビジネスリサーチラボ、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。以降、組織・人事領域を中心に、民間企業を対象にした調査・コンサルティング事業を展開。研究知と実践知の両方を活用した「アカデミックリサーチ」をコンセプトに、組織サーベイや人事データ分析のサービスを提供している。近著に『現場でよくある課題への処方箋 人と組織の行動科学』(すばる舎)や『越境学習入門 組織を強くする「冒険人材」の育て方』(共著;日本能率協会マネジメントセンター)など。
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