2022年6月27日
出戻り採用を奏功させる方法
これまで、従業員は自分が勤めている企業を一度辞めてしまうと、「裏切り者」扱いされてしまい、その企業に復帰するのはなかなか難しいものでした。ですが近年、一度退職した従業員を再び雇い入れる、いわゆる「出戻り採用」「出戻り社員」(※1)に注目が集まっています。マイナビの2020年時点の調査では、出戻り(アルムナイ(※2))採用を導入している企業は52.7%にのぼっています(※3)。
有名企業でも、例えばトヨタの「プロキャリア・カムバック制度(※4)」、パナソニックの「A Better Career(※5)」におけるカムバックキャリアの受け入れ・社員再就職制度、日本マイクロソフトの「リターンシッププログラム(※6)」など、様々な条件がついていますが、出戻り採用を歓迎する制度を設けています。
一般的な出戻り採用のメリットとして、採用・教育コストが削減できる、社内にはない新たな知識やスキルをもたらしてくれる、といったことが挙げられています(※7、※8)。しかし、出戻り採用・出戻り社員が、常に組織にメリットをもたらすわけではないことが、学術研究からわかってきています。
本コラムでは、学術研究からわかっている出戻り採用の長所と限界を確認し、出戻り採用を奏功させるためのポイントを考えていきます。
出戻り社員と、勤め続けている社員の違い
出戻り社員に関する研究(※9)として、プロビデンス大学のSnyderら(※10)が大手多国籍専門サービス企業のアメリカ人従業員を対象に行なった調査があります。結果、その企業で勤め続けている社員と比較して、出戻り社員のほうが、職務満足度・組織コミットメント(組織への愛着)が高く、役割外行動(公式に自分の業務として定められている役割以外の行動、※11)が多いことがわかりました。
一度退職して再び戻ってきた従業員のほうが、仕事に対する満足度や組織に対する帰属意識が高く、自分が業務上定められている役割を超えた部分で自社に貢献しようとする、ということです。
出戻りにおいては「心理的契約の再交渉」が行われる
なぜ、このような違いが見られるのでしょうか。Snyderらは、「心理的契約の再交渉(Psychological Contract Renegotiation)」という概念を用いて説明しています。
まず、心理的契約(Psychological Contract)とは、「個人と企業の間で交わされた、交換契約の条件に関する個人の信念」(※10)、より簡単に言えば「自分が提供したものに対して、会社はこう応えてくれるだろう、という従業員の期待」を指します。例えば、「自分がこの会社からのオファーを承諾したのは、この会社で自分のやりたい仕事ができるはずだからである」「会社に貢献している限り、会社はそれに見合った報酬やキャリアを用意してくれるはず」などといった考えです。
しかし、事業再編や人事制度の変更など、様々な理由によってこの心理的契約が成り立たなくなることもあります。このように「自分の組織が、心理的契約における義務を果たすことができないこと」「従業員が抱いていた期待に、会社が応えられなくなること」を、心理的契約の違反(Psychological Contract ViolationまたはBreach)と呼びます(※12)。
従業員が心理的契約の違反を認識したり、違反に対して否定的に反応したりした場合、組織コミットメント(組織への愛着)の低下(※13)、職務満足度の低下(※14)、役割外行動(公式に自分の業務として定められている役割以外での行動)の低下(※15)、離職意思(現在の会社を退職しようと考える意向)の上昇(※16)など、企業にとって様々なネガティブな結果がもたらされることがわかっています。
Snyderらは、この心理的契約にまつわる理論や研究結果を出戻り採用に当てはめ、
- 最初の退職は、心理的契約の違反を従業員が認識したことにより引き起こされた可能性がある
- 出戻り採用において心理的契約を仕切り直し、従業員と企業がお互いにとってより良いものとなるよう「再交渉」することよって、心理的契約の違反を挽回し、関係性を再構築することができる
と考えました。
心理的契約の再交渉において重要なこと
心理的契約が再交渉される際の主なテーマは、「以前在籍していた頃に感じていた心理的契約の違反が、どれだけ解決されるか」です。言い換えると、「出戻りに当たって、自分が組織に期待しているものと、組織が従業員に提供できるものが可能な限り一致している」と従業員が感じることができれば、再交渉は成功したと言えます。
もちろん、具体的な条件や働き方に関する、明文化された「労働契約」の見直しが行われることも重要でしょう。しかし、心理的契約の違反の解決という文脈においては、特に、退職後の従業員の経験が影響すると考えられます。
例えば、一度他社に転職した従業員が、「前の会社は自分の期待に応えてくれない(新たなスキルが得られない、人事評価が自己評価よりも低い、昇進しにくくキャリアの見通しが立たない、など)と思って転職したけど、今の会社でも同じだ」と感じることがあれば、自分の組織に対する期待が高すぎること、それを組織に求めるのは難しいことに気づき、以前の会社への過度な期待は抑えられます。
また、「前の会社のキャリアパスは不満だが、今の会社と比べると、自分の強みが活かせる仕事が出来ていたかもしれない」などと、以前の会社に在籍していた時のメリット・デメリットを冷静に認識することもあるでしょう。
こうした従業員側の認識の変化により、従業員の期待と会社の提供できるもののバランスが取れる、つまり、出戻り社員は「期待できることに対して期待をし、期待できないことについては期待しない」という認識を持つようになると考えられます。
新入社員の「過度な期待」が持つネガティブな影響
一方で、その会社で勤務した経験がない社員は、入社するに当たって「この会社に入りさえすれば、将来は安泰だろう」「この会社に入りさえすれば、新たなスキルが手に入るだろう」などと過度な期待を抱きがちです(※17)。入社先を決めるという一大事においては、そのような期待を持つことで、自分の選択を正当化しているのかもしれませんし、逆に言えば、そのような期待を持てなければ入社しようと思わない、とも考えられます。
このような過度な期待を持った新入社員は「ハネムーン効果」、すなわち、入社から数ヶ月の間だけ、職務満足度の上昇などのポジティブな反応を示します。しかしその後、入社前に自分が抱いていた期待と入社後の現実との不一致、いわゆる「リアリティショック(Reality Shock)」(※18)や、前述の心理的契約違反を経験することが多くなっていきます。すると「ハングオーバー効果」、つまり職務満足度の低下といったネガティブな反応を示すことが次第に増えていくのです(※19)。
実際、テキサスA&M大学のBoswellら(※19)による転職してきた新入社員を対象とした研究で、入社3ヶ月までは職務満足度が高まった後(ハネムーン効果)、6ヶ月目にかけて下降し(ハングオーバー期)、12ヶ月目まで横ばいになることがわかっています。
このような新人の高い期待と比較すると、出戻り社員が「会社が応えられる高さの期待」を持っていることは注目に値します。
心理的再交渉の成功によってもたらされるもの
心理的契約の再交渉が成功して元の企業に復帰した場合、出戻り社員は「自分のことを好意的に評価してくれているからこそ、会社は再び自分を受け入れてくれた」と感じます。
心理的契約の考え方に基づけば、会社側は「出戻り社員の受け入れ」をしてくれたため、それに対して出戻り社員側は「何かを“お返し”しなければ」という義務感、さらに言えば「受け入れてくれたのに、自分が組織に対して否定的な感情を持っているのはおかしい」という感覚を抱きます。
これにより、仕事や組織に対する感情の肯定的な変化が促されるため(※20)、出戻り社員は、仕事に対する満足度や組織に対する帰属意識が高くなるのです。
さらに、心理的契約が満たされているという認識、また、仕事満足度・組織への帰属意識は、役割外行動(公式に自分の業務として定められている役割以外での行動)を促進する要因になります(※21、※22)。出戻り社員は、再び受け入れてくれたことに対するお返しの義務感として、あるいは仕事や組織に対する肯定的な感情の結果として、公式に自分の業務として定められている役割以外の行動でも、組織に貢献しようとするのです。
まとめると、「出戻り社員は、元の組織に戻るにあたって心理的契約の再交渉が行われることにより、仕事に対する満足度や組織への帰属意識が高まり、それが役割外行動を促進させる」ということです。
図:出戻り社員と組織の関係性
勤め続けている社員・外部から中途採用した社員の方が優れている点
一方、以下の点については、出戻り社員よりも、その企業で勤め続けている社員・外部から新たに中途採用した社員のほうが優れていることが実証されています。
(1)役割内行動
先程のSnyderら(※10)の調査においては、出戻り社員のほうが役割外行動が多いことと同時に、その企業で勤め続けている社員のほうが役割内行動(公式に自分の業務として定められている役割、※23)が多い、ということもわかっています。この結果についてSnyderらは、「その企業で勤め続けている社員に、心理的契約を再交渉する機会が無いこと」を理由として挙げています。
心理的契約を再交渉する機会が無い、その企業で勤め続けている社員は、自分の所属する組織が心理的契約に違反したとしても、基本的にどうすることもできません。そうして日々フラストレーションを抱えた、その企業で勤め続けている社員は、満足感やコミットメントを保つことが困難になります(※14、※24)。
また勤続年数が長くなるほど、自分が働いて組織に貢献する理由は、「会社に雇ってもらえたからお返ししなければ」というものではなく、「自分が雇われ続けるために、会社や周囲から求められていることをやる」というある種ドライなものに変化するとされています(※10)。
そのため、自分が組織から公式に求められている役割内行動を行い、自分が公式には求められていない役割外行動に割く労力を減らす、ということです。
(2)2年目以降のパフォーマンス、パフォーマンスの伸び率
ミズーリ大学のArnoldら(※25)が、全米に拠点を持つ大規模な小売企業のマネージャー候補を対象に行った調査では、出戻り社員、社内で昇進した社員、外部から中途採用した社員という3形態を比較しています。
結果、マネージャー候補になった1年目のパフォーマンス(上司による評価)に差は見られなかったものの、2年目以降のパフォーマンス、ならびにパフォーマンスの伸び率は、出戻り社員よりも、その企業で勤め続けている社員・外部から中途採用した社員のほうが高いということが明らかになりました(※26)。
図:Arnoldら(※25)より引用
このような結果になった理由について、Arnoldらは、技能習得に関する研究知見から、「労働者が新しいタスクや仕事に初めて触れたとき、パフォーマンスが大幅に向上する」ため、と説明しています。
つまり、社内で昇進した社員と外部から中途採用した社員は、これまで経験したことのない業務に触れるためパフォーマンスが向上しますが、出戻り社員は以前と同様の業務を行うことになるため、パフォーマンスがそこまで大きく伸びるわけではない、ということです。
なお、出戻り社員のパフォーマンスは、1度目の退職前とほぼ変わらないこともわかっており、より具体的には、出戻り社員の62%が、1度目の在職期間中の最終的な業績評価と、再雇用後の最初の業績評価が同じである、ということが示されています。
このことについてArnoldらは、
- 出戻り社員のパフォーマンスやコンピテンシーが、離職期間中に培った新たな知見を持ち帰ってくることにより、出戻り後に高くなるわけではない
- 逆に、離職期間中に劣化して、低くなるというわけでもない
と結論づけています。
これは出戻り採用で一般的に挙げられるような、「外部で培った新たな知見を組織にもたらしてくれる」というメリット、あるいは「外部に出ることで、一度自社で学んだことを忘れたり、転職先での学びに上書きされたりすることで、出戻り後の適応に支障をきたす」というデメリットのどちらにも反する内容となっている点で興味深いものです。
この点についてArnoldらは、「過去の行動と、将来やるべき行動が内容的・状況的に近いほど、過去のパフォーマンスが、将来のパフォーマンスを予測する」という行動一貫性理論(※27)を用いて説明しています。これを出戻り社員に当てはめると、離職期間中にどのような経験や知見を得ていたにせよ、出戻り後の業務内容が、一度目の離職前とほぼ同様の業務内容である限り、一度目の離職前のパフォーマンスの程度が、出戻り後のパフォーマンスとほぼ一致する、ということになります。
(3)定着率
前述のArnoldら(※25)の研究では、出戻り社員が、社内で昇進した社員の2.27倍、外部から中途採用した社員の2.04倍、離職する可能性が高いということもわかっています。つまり、出戻り社員よりも、社内で昇進した社員・外部から中途採用した社員のほうが定着しやすいのです。
まず、社内で昇進した社員の定着率のほうが高い理由として、Arnoldらは、「社内で昇進した社員のほうが、転職で失う利得や、金銭的・社会的コストが大きいからではないか」としています。例えば、社内で昇進した社員には、これまで築き上げてきた社内の人間関係や、業績に対する評価などがありますが、転職すればこれらを失うことになります。
特にArnoldらの研究における対象者はマネージャー候補なので、すでに一定の評価を受けた上で候補となり、さらに今後マネージャーとなる可能性が高いことを考えると、転職するのには気が引けるのでしょう。
一方で、もし出戻り社員が、組織に何らかの不満を感じて一度目の離職をし、戻った後にその不満を感じれば、再び転職してしまう可能性があります。これは、前述の「心理的契約の再交渉」に失敗したケースと言えそうです。
また、出戻り社員の中には、いわゆる“転職ぐせ”(hobo syndrome、※28)がある人がいることも示唆されており、人によっては戻ってきたとしても、すぐに転職してしまう可能性も考えられます。
なお、出戻り社員における懸念は、外部から中途採用した社員にも当てはまりそうなものです。しかし、Arnoldらの結果では、出戻り社員よりも外部から中途採用した社員のほうが定着率は高いというものでした。この結果の説明として、Arnoldらの研究結果では、外部から中途採用した社員はパフォーマンスが高くなりやすいだけでなく、社内で昇進した社員・出戻り社員よりも昇進が早いことがわかっています。せっかく高い評価を受けて昇進したのに、それを再転職によって早々に手放すということも考えにくいでしょう。
表:出戻り社員・それ以外の社員の比較
出戻りにおける「1度目の退職理由」の重要性
ここまで、出戻り社員がいることを前提に、出戻り社員とそれ以外の社員との比較を見てきましたが、そもそも退職した社員が全員戻ってきてくれるとは限りません。社員の出戻りにおいては、「1度目の退職理由」の重要性が実証されています。
テキサス・クリスチャン大学のShippら(※29)は、ある企業の出戻り社員と、その企業を退職したままの人の退職理由を比較しました。その結果、会社には関係のない、個人的な仕方のない事情(配偶者の転勤による転居、親の病気の介護など)が理由で退職した場合、出戻りする確率が、出戻りしない確率の約5倍高い一方で、会社に対する不満(職場の人間関係が悪いなど)があって辞めた場合、出戻りしない確率のほうが約2倍高いということもわかっています。
社員側が出戻りしようと思わない(心理的契約の再交渉のテーブルに着く気が起こらない)ほどの会社に対する不満がなければ、個人的な事情が解決するか、その事情があっても働ける環境さえ整えられれば、戻ってくる確率が高まると考えられます。
出戻り採用を奏功させるためのポイント
ここまでの内容をまとめると、
- 出戻り社員は、出戻りにあたって「心理的契約の再交渉」を行う。それに成功して出戻りすることで、その企業で勤め続けた社員よりも、職務満足度・組織コミットメントが高く、役割外行動が促進される
- 一方、その企業で勤め続けた社員・外部採用社員のほうが、出戻り社員よりも役割内行動・2年目以降のパフォーマンスとその伸び率・定着率が高い
- 出戻り社員のパフォーマンスは、前回退職時の最終的なパフォーマンスと同様である
- 個人的な事情による退職の場合は出戻りに関心を持つ可能性が高く、会社に対する不満から退職した場合、出戻りしない可能性が高い
ということになります。
これらの点から推察される、出戻り採用を奏功させるポイントは以下のとおりです。
(1)退職前のパフォーマンスが高かった人に絞って、出戻りを打診する
「出戻り社員のパフォーマンスが、前回退職時の最終的なパフォーマンスと同様である」ということから、全退職者を出戻り採用の対象とするのではなく、退職前のパフォーマンスが高い人(もしくは企業として戻ってきてほしい人)に対象を絞って、出戻りを直接打診するほうが、戻った後に高いパフォーマンスを発揮できると考えられます。
そのため、再雇用制度などの「プル型採用」に加えて、対象となる退職者に、人事や元上司が直接コミュニケーションを取るような「プッシュ型採用」を行うことが望ましいでしょう。
(2)心理的契約の再交渉を成功させる
せっかく出戻り採用に至ったとしても、社員が会社に期待することと会社が応えられること、あるいは、会社が社員に期待することと社員が応えられることの間にギャップがあれば、またすぐに退職してしまう可能性もあります。
暗黙の期待である心理的契約を、明示化された契約にしていく。言い換えると、社員側と会社側が、お互いに求めること・応えられることを明確に示しあい、すり合わせていくことで、再交渉がよりうまく進める必要があります。
(3)出戻り社員が“戻る場所”を考える
「出戻り社員はその企業で勤め続けた社員よりも、自分に与えられた役割内の行動ではなく、社内プロジェクトや管理業務などといった役割外の行動を取る傾向が強い」ということから、直接的な売上を生み出すような役割内行動に加えて、社内調整や、新規事業開発などといった立場を用意したり、役割内行動とあわせて役割外行動も評価対象としたりすると良いでしょう。
また、初年度に関しては、出戻り社員とその企業で勤め続けた社員・外部採用社員との間でパフォーマンスに差はみられません。さらに出戻り社員は、組織やそこで働く人々や、関係性についての知識を有しています(※30)。そのため、社内で連携を取りながら早期に立ち上げが必要なプロジェクトが出てきたり、臨時で急に人員が必要な業務が発生したりした場合、出戻り採用は有効な選択肢の一つになり得ます(※25)。
(4)在職時から、組織と社員の良好な関係を築き、退職時にも丁寧な対応を行う
「会社に対する不満から退職した場合、戻らない可能性が高い」ということから、今いる従業員を将来の採用候補と捉え、在職時から組織と社員間の良好な関係を築いておくことが重要です。そうすれば、仮に個人的な事情で退職をせざるを得なかったとしても、将来的にその事情が解消さえすれば、戻ってきてくれる可能性が高まります。
個人的な事情については、テレワークや、病気・介護と仕事の両立支援などといった仕組み・制度を活用することで、そもそも退職自体を減らすこともできるかもしれません。逆に、企業がそれらの利用を提案したとしても、社員が頑なに退職を選ぶ場合、背後に別の理由(キャリアや人生の見直しなど)や、会社への不満がある可能性も考えられます。
おわりに
以上、出戻り採用に関する学術研究から、出戻り採用を奏功させるためのポイントについて考えてきました。新卒採用・中途採用に次ぐ、新たな採用手段として注目を浴びている出戻り採用ですが、その特徴・限界を踏まえた上で、適切な形で出戻り採用を行うことが、企業・出戻り社員双方にとって幸せな結果をもたらすと言えるでしょう。
脚注
※1:「出戻り」と同じ意味を表す言葉に「再雇用」がありますが、日本国内では定年退職者を再び雇い入れる文脈で用いられることも多いため、本コラムでは「出戻り」という表現を用いています。
※2:アルムナイ(Alumni)とは、元々「卒業生」や「同窓生」を意味し、それが転じて企業の退職者を指す言葉となっています。
※3:マイナビ「「中途採用状況調査2021年版」を発表」https://dugf25wejf35p.cloudfront.net/wp-content/uploads/2021/03/%E4%B8%AD%E9%80%94%E6%8E%A1%E7%94%A8%E7%8A%B6%E6%B3%81%E8%AA%BF%E6%9F%BB2021%E5%B9%B4%E7%89%88.pdf(2022年2月3日閲覧)
※4:トヨタ自動車「『プロキャリア・カムバック制度』導入について」https://global.toyota/jp/detail/1468417(2022年1月27日閲覧)
※5:パナソニック株式会社「A Better Careerの取り組み」https://recruit.jpn.panasonic.com/career/better_career/(2022年1月27日閲覧)
※6:日本マイクロソフト「キャリア再開・職場復帰をサポートするリターンシップ合同説明会を開催」https://news.microsoft.com/ja-jp/2019/11/12/191112-information/ (2022年1月27日閲覧)
※7:Kumavat, P. P. (2012). Boomerang of Employees:“The Strategic way of filling the Organizational Talent Gap”. International Journal of Management and Social Sciences Research, 1(2), 14-17.
※8:リクルートエージェント「【人事必見】出戻り社員とは?メリット・デメリットや具体的な採用方法を解説」https://www.r-agent.com/business/knowhow/article/9641/ (2022年1月27日閲覧)
※9:学術研究において、出戻り社員は「ブーメラン(Boomerang)」、その会社で働き続けている社員は「ステイヤー(Stayer)」などと表現されることがあります。
※10:Snyder, D. G., Stewart, V. R., & Shea, C. T. (2021). Hello again: Managing talent with boomerang employees. Human Resource Management, 60(2), 295-312.
※11:この研究では、「顧客企業には請求できない、社内プロジェクト等自社のためになるような行動に費やした時間」を役割外行動の指標として用いています。
※12:Morrison, E., & Robinson, S. L. (1997). When employees feel betrayed: A model of how psychological contract violation develops. Academy of Management Review, 22, 226–256
※13:Zhao, H., Wayne, S. J., Glibkowski, B. C., & Bravo, J. (2007). The impact of
psychological contract breach on work-related outcomes: A metaanalysis. Personnel Psychology, 60, 647–680.
※14:Robinson, S. L., & Rousseau, D. M. (1994). Violating the psychological contract: Not the exception but the norm. Journal of Organizational Behavior, 15, 245–259.
※15:Robinson, S. L., & Morrison, E. W. (1995). Psychological contracts and OCB: The effect of unfulfilled obligations on civic virtue behavior. Journal of Organizational Behavior, 16, 289–298.
※16:Rousseau, D. M. (1995). Psychological contracts in organizations: Written and unwritten agreements. Thousand Oaks: Sage
※17:Wanous, J. P. (1992). Organizational entry: Recruitment, selection, orientation, and socialization of newcomers. Prentice Hall.
※18:Dean, R. A., Ferris, K. R., & Konstans, C. (1988). Occupational reality shock and organizational commitment: Evidence from the accounting profession. Accounting, Organizations and Society, 13(3), 235-250.
※19:Boswell, W. R., Shipp, A. J., Payne, S. C., & Culbertson, S. S. (2009). Changes in newcomer job satisfaction over time: examining the pattern of honeymoons and hangovers. Journal of Applied Psychology, 94(4), 844–858.
※20:Blau, P. M. (1964). Exchange and power in social life. New York: Wiley
※21:Coyle-Shapiro, J. (2002). A psychological contract perspective on organizational citizenship behavior. Journal of Organizational Behavior, 23, 927–946.
※22:LePine, J. A., Erez, A., & Johnson, D. E. (2002). The nature and dimensionality of organizational citizenship behavior: A critical review and metaanalysis. Journal of Applied Psychology, 87, 52–65.
※23:この研究では、「顧客企業に直接請求することのできる業務に費やした時間」を役割内行動の指標として用いています。
※24:Hunter, L. W., & Thatcher, S. M. B. (2007). Feeling the heat: Effects of stress, commitment, and job experience on job performance. Academy of Management Journal, 50, 953–968.
※25:Arnold, J. D., Van Iddekinge, C. H., Campion, M. C., Bauer, T. N., & Campion, M. A. (2021). Welcome back? Job performance and turnover of boomerang employees compared to internal and external hires. Journal of Management, 47(8), 2198-2225.
※26:なお、出戻り社員―社内で昇進した社員・外部採用社員間のパフォーマンスや伸び率の差は、年数が経過するにつれて縮まっていくこともわかっています。
※27:Wernimont, P. F., & Campbell, J. P. (1968). Signs, samples, and criteria. Journal of Applied Psychology, 52: 372-76.
※28:転職ぐせについて、学術用語では「ホーボー症候群(hobo syndrome)」と呼ばれており、労働条件等に関わらず、仕事を転々とする傾向を指します。Judge, T. A., & Watanabe, S. (1995). Is the past prologue?: A test of Ghiselli’s hobo syndrome. Journal of Management, 21(2), 211-229.
※29:Shipp, A. J., Furst‐Holloway, S., Harris, T. B., & Rosen, B. (2014). Gone today but here tomorrow: Extending the unfolding model of turnover to consider boomerang employees. Personnel Psychology, 67(2), 421-462.
※30:Keller, J. R., Kehoe, R. R., Bidwell, M. J., Collings, D. G., & Myer, A. (2021). In with the old? Examining when boomerang employees outperform new hires. Academy of Management Journal, 64(6), 1654-1684. https://doi.org/10.5465/amj.2019.1340
著者
小田切岳士
同志社大学心理学部卒業、京都文教大学大学院臨床心理学研究科博士課程(前期)修了。修士(臨床心理学)。公認心理師、臨床心理士。働く個人を対象にカウンセラーとしてのキャリアをスタートした後、現在は主な対象を企業や組織とし、臨床心理学や産業・組織心理学の知見をベースに経営学の観点を加えた「個人が健康に働き組織が活性化する」ための実践を行っている。特に、改正労働安全衛生法による「ストレスチェック」の集団分析結果に基づく職場環境改善コンサルティングや、職場活性化ワークショップの企画・ファシリテーションなどを多数実施している。