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コラム

組織風土改革のための基礎知識

コラム
自社の組織風土を変えたい。しかし、どこから手を付ければ良いか分からない。そう感じている人事担当者は多いのではないでしょうか。本コラムでは、組織風土改革に先立って知っておくと良い、組織風土に関する基本的な知識を提供します。

組織風土は従業員が知覚できるもの

「組織風土」とは何でしょうか。組織風土の定義を考える際には、「組織文化」に言及しなければなりません。何故なら組織文化は、組織風土を含む上位概念だからです(※1)。

組織文化とは、組織が市場の中で活動を行う過程で生み出された基本的仮定のパターンです(※2)。対して組織風土は、組織文化の中でも顕在化されたものであり、従業員が知覚できる側面を指します(※1)。

従業員が組織風土を知覚可能であるというのは、アンケート調査などで従業員に尋ねれば、従業員は自社の組織風土について答えられることを意味します(※3)。

組織風土は従業員が知覚できます。しかし、だからと言って、従業員が日常的に自社の組織風土を「自覚」できているとは限りません。組織風土はいわば空気のようなものです。普段はほとんど意識されていません。

そのため、アンケート調査などで質問することによって可視化する必要があるわけです。組織風土改革を行うときには、組織サーベイをあわせて実施すると良いでしょう。

組織風土を構成する次元は無数にある

続いて、組織風土の測定について考えていきましょう。実は、組織風土と一口に言っても、多種多様な次元が含まれています。

学術界において組織風土を測定する尺度の一つ、「Organizational Culture Inventory」(※4)を例にとって説明します。この尺度は、組織で働く人々の思考スタイルに注目し、次の12の次元から組織風土を測定します(※5)。

  • 人間的・援助的(Humanistic-Helpful):人間中心的な方法で管理されている
  • 関係的(Affiliative):人間関係の優先順位が高い
  • 承認的(Approval):人間関係の対立が回避されている
  • 保守的(Conventional):保守的・伝統的に統制されている
  • 依存的(Dependent):階層によって管理されている
  • 回避的(Avoidance):成功は讃えず、失敗を罰する
  • 反抗的(Oppositional):対立が蔓延している
  • 強制的(Power):役職に基づく権威を基盤としている
  • 競争的(Competitive):勝利に価値があると考えられている
  • 能力/完全主義(Competence/Perfectionistic):完全主義や勤勉が重視されている
  • 達成(Achievement):自分の目標を設定・実行できる人を評価する
  • 自己実現(Self-Actualization):創造性や質、成長に価値を置いている

如何でしょうか。1つの尺度の構成要素を確認するだけでも、様々な観点があることに気づくはずです。組織風土の尺度は、他にも沢山あります。組織風土の次元は無数に存在することが想像できるでしょう。

企業によって異なる有効な組織風土

組織風土を測定する次元が多数探索されているのには、2つの理由があります。一つは、組織風土は企業によって異なるからです。

組織風土は、ある組織を他の組織から区別する特徴から構成されている。そう述べる研究者もいます(※6)。企業ごとに異なる組織風土を捉えようと、相応の数の次元が開発されてきたわけです。

もう一つは、どのような状況でも効果的な組織風土はないからです。仮に、そうした組織風土があれば、測定すべき次元は限定されていたことでしょう。

有効な組織風土は、その組織が置かれた状況によって異なります。例えば、変化する環境では、リスクテイクを重視する風土は合理的かもしれませんが、安定した環境ではそうではありません。

自社の目指す組織風土の設定

組織風土が企業によって異なり、なおかつ、有効な組織風土は状況によって異なる。そうだとすれば、組織風土の測定にあたって、自社に合ったツールを選ぶことが極めて重要になります。

組織風土を改革しようとする企業は、まず「自社にとって望ましい組織風土とは何か」を考えるべきでしょう。あるべき組織風土を定めるのが改革の出発点です。

目指す組織風土に対して、現状がどうなっているのか。目指す組織風土に近づくには、どうすれば良いか。こうしたことを測定することで、改革のために必要な情報を得ることができます。


※1:Ashforth, B. E. (1985). Climate formation: Issues and extensions. Academy of Management Review, 10(4), 837-347.
※2:Schein, E. H. (1985). Organizational culture and leadership: A dynamic view. CA: Jossey‐Bass.
※3:一方で、組織文化は従業員に知覚できる部分に加えて、知覚できない暗黙の前提なども含んでいます。
※4:Cooke, R. A., and Rousseau, D. M. (1988). Behavioral norms and expectations: A quantitative approach to the assessment of organizational culture. Group & Organization Studies, 13(3), 245-273.
※5:このコラムでは示しませんが、実際には次元ごとに複数の質問項目が紐付いています。
※6:Forehand, G. A. and Von Gilmer, (1964). Environmental variations in studies of organizational behavior. Psychological Bulletin, 62


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